女性アーティストを対象とした国際的なアートアワード「Max Mara Art Prize for Women」の第10回受賞者に、インドネシア出身のアーティスト、ディアン・スチ(Dian Suci)が選出された。5月7日にMax Mara、コレツィオーネ・マラモッティ、そしてジャカルタのMuseum MACANによって発表された。
本賞は2005年に創設され、新進から中堅までの女性アーティストを支援することを目的とするもの。これまでロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーと協働してきたが、第10回となる今回は初めてのアジア地域となるインドネシアに焦点を当て、Museum MACANとの協働となった。審査員長は、ニューヨークのハイ・ライン・アートのディレクターであり、第59回ヴェネチア・ビエンナーレ総合ディレクターも務めたセシリア・アレマーニが担当した。
スチは985年インドネシア・クブメン生まれ。現在はジョグジャカルタを拠点に活動している。インスタレーション、絵画、彫刻、映像など多様なメディアを横断しながら、シングルマザーとしての自身の経験を起点に、女性の政治的な家庭化、権威主義、ファシズム、家父長制、資本主義などをテーマに制作を行ってきた。
受賞プロジェクト「Crafting Spirit: Cultural Dialogues in Heritage and Practice」は、宗教的工芸文化と資本主義システムの交差を、イタリアとインドネシアを比較しながら考察するものだ。奉納品や宗教的イメージの手工芸制作を軸に、信仰がどのように商品化され、消費されていくのかを探究する。スチは、工芸を「国家の記憶や伝統を宿す生きたアーカイブ」と捉え、身体的な反復行為や手仕事のなかに宿る精神性に注目している。
受賞により、スチはイタリア各地を巡る6ヶ月間のレジデンスに参加する。ウンブリア州アッシジでは修道院に滞在し宗教工芸を学ぶほか、ローマでは典礼研究者とともにミサの儀礼や象徴性を調査。さらにプーリア州レッチェでは張り子技法を、フィレンツェではテンペラ画や教会装飾に用いられる織物技術を学ぶ予定だ。
完成した新作は、2027年夏にジャカルタのMuseum MACANで発表された後、同年秋にイタリア・レッジョ・エミリアのコレツィオーネ・マラモッティでも展示される。後者は作品を収蔵する予定となっている。
スチは受賞に際し、「このプロジェクトは、信仰と生存のあいだに存在する女性職人たちの身体や記憶の物語から生まれたものです」とコメント。「インドネシアとイタリアを往還しながら、身体に宿る精神性や儀礼について学び、それらを人間の労働や文化的継承の親密さを尊重するかたちで作品へと翻訳していきたい」と語った。
またアレマーニは、「ディアン・スチの作品は、日常的な家庭空間を政治的抵抗の場へと変換する力を持っている」と評価。「彼女のプロジェクトは、資本主義や大量生産の侵食に対するレジリエントな応答として精神性を捉えている点で非常に重要だ」と述べている。





















