いっぽうで、今年のランキングには、伝統的な西洋ギャラリーの影響力が低下しているという顕著な傾向が見られる。昨年高順位を記録していたメガギャラリーのオーナーたちが今年は大幅に順位を落としており、その変化はアートマーケットの構造的な変動を反映している。例えば、ハウザー&ワースの共同設立者であるアイワン・ワースとマニュエラ・ワース、パートナー兼社長のマーク・パイヨは、昨年の14位から28位へと順位が後退した。さらに、ラリー・ガゴシアンは12位から35位、デイヴィッド・ツヴィルナーは19位から38位、エマニュエル・ペロタンは23位から42位、マーク・グリムシャーは20位から51位と、いずれも順位を大きく下げた。
また、今年上位10人のうち7人/組はアーティストまたはアーティストコレクティブとなった。今年2位にランクインしたリクリット・ティラヴァーニャは、伝統的なアートの枠を超え、参加型の食事やゲームを通じて観客との対話を重視するアプローチで高く評価された。彼は2022年の「岡山芸術交流」のアーティスティック・ディレクターも務めた。スティーヴ・マックイーン(4位)は、映画とアートの境界を越えて活動を続け、昨年1位だったナン・ゴールディン(7位)は、アートとアクティヴィズムを見事に融合させるアーティストとしてその地位を確立している。
さらに、ランキングに登場する多くのアーティストは、「たんに展示や機関のために作品を制作するのではなく、彼らの地位を利用して新しいインフラやネットワークを築き、仲間との連携を強化し、社会的な文脈にも影響を与える」こととしても評価されている。イブラヒム・マハマ(14位)は、自身が手掛けた彫刻インスタレーションの売上から得た資金を、ガーナ北部タマレにある3つの文化機関の運営に充てている。サミー・バロジ(17位)、マーク・ブラッドフォード(19位)、シアスター・ゲイツ(32位)、インカ・ショニバレ(36位)、ダルトン・パウラ(87位)らも同様に、社会的な意義を重視した活動を行っており、アートを通じて社会変革を目指している。
日本からは、昨年に引き続き、2名の人物がランキングに登場している。森美術館の館長である片岡真実は、昨年の64位から62位へとランクアップし、Take Ninagawaの代表でアートウィーク東京の共同創設者である蜷川敦子も、昨年の93位から85位へと順位を上げた。
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