私的な印象では、日本の現代美術シーンに「批評がない」「言説がない」と嘆かれるようになったのは、2020年以降の新型コロナウィルスの感染拡大における一連の社会変化と時を同じくしていた。数多くの批評家やアーティストによる言説を世に送り出してきた「美術手帖」の芸術評論募集の第16回の結果が発表されたのは2019年のことであり、それ以降は開催されていない。
そうした時代において、年間ベストを選ぶことはなにを意味するのだろうか?
まず僕は、芸術評論募集の第17回の開催を心待ちにしている。展覧会や作品の要約ではない自由な触発に基づいたテクスト(それは時として読みずらいものかもしれない)がなければ、私たちはいつまでたっても「ポスト」コロナの社会を生きることができないのではないだろうか? そこでここではベストというより批評や議論(むしろその形式的発明)について考えるべき展覧会を挙げたい。