2022.1.11

大山エンリコイサムが横綱・照ノ富士のために化粧廻しを制作。「新しい感性を提示」

1月9日に行われた大相撲初場所初日において、横綱・照ノ富士が新たな「三つ揃え化粧廻し」を披露。大山エンリコイサムが手がけたアートワークが注目を集めている。

大山エンリコイサムのアートワークが施された化粧廻しを付ける照ノ富士(中央) Photo (C) Hitomi Mori
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 相撲で力士が土俵入りする際に着用する「化粧廻し」。そのなかでも一際注目を集めているのが、美術家・大山エンリコイサムが手がけた横綱・照ノ富士のものだ。

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #351, #350, #352 (left to right), 2022
Silk embroidery
Dimension variable
Artwork ©︎ Enrico Isamu Oyama
Photo ©︎ Shu Nakagawa

 1月9日に行われた大相撲初場所初日において初披露されたこの化粧廻しは、黒の生地に大山の代表的なモチーフである「クイックターン・ストラクチャー」が施され、アルファベットで「TERUNOFUJI」と刺繍されている。化粧廻しは通常、企業が力士の応援と自社の宣伝を兼ねて製作するが、今回は個人のアートコレクターの発案によるもの。複数のアーティスト候補から照ノ富士の希望を踏まえ、大山が選ばれたという。

 昨年4月に大山が本人と会い、コーディネーターや職人との連携を経て、年明けに化粧廻しが完成。大山は制作のヴィジョンについて、次のようにコメントを寄せている。

「強靭な精神の持ち主である横綱・照ノ富士関に相応しい作品を生み出すことに集中しました。私の表現である『クイックターン・ストラクチャー』(QTS)は抽象なので、具体的な対象やメッセージを表すわけではありません。そのため、純粋な造形のスタイル=かたちのうちにある「構え」によって、横綱の人格や風格を捉えることを試みました。また相撲は神技であり、伝統を重んじる日本の国技なので、その価値観を尊重しつつ、現代美術によって新しい感性の化粧廻しを提示しようと考えました」。

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #350 (detail), 2022
Artwork ©︎ Enrico Isamu Oyama
Photo ©︎ Shu Nakagawa

 刺繍によって表現された「QTS」は、原画を一度デジタル化し、レーザーで生地にアウトラインを写し取り、その内側を刺繍するという手間がかかったものだ。テレビで鑑賞されることも考え、テレビの画面を通したときの見え方や、三つ揃えで並ぶときのバランスなども多角的に検討したという。

 大山は実際に着用された姿について、「初日に化粧廻しを着た横綱が土俵入りした瞬間は、とても印象的でした。神聖な場に自分の作品が関われたことを嬉しく思います」としつつ、「横綱は初日も白星スタートでした。3連覇の偉業に向け、この化粧廻しが少しでも後押しになればと思います」とエールを送っている。

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #351, 2022
Silk embroidery
Dimension variable
Artwork ©︎ Enrico Isamu Oyama
Photo ©︎ Shu Nakagawa
Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #350, 2022
Silk embroidery
Dimension variable
Artwork ©︎ Enrico Isamu Oyama
Photo ©︎ Shu Nakagawa
Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #352, 2022
Silk embroidery
Dimension variable
Artwork ©︎ Enrico Isamu Oyama
Photo ©︎ Shu Nakagawa