背景の異なる人々がいかに共存できるのか? 田中功起の映像作品《可傷的な歴史(ロードムービー)》が京都で上映

国内外で高く評価されているアーティスト・田中功起の映像作品《可傷的な歴史(ロードムービー)》が、2月11日〜14日に京都のTHEATRE E9 KYOTOで上映される。在日コリアン3世と日系スイス人のふたりの対話から、異なる背景を持つ人々が「いかに共に生きるのか」という問いを投げかける作品だ。

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 ヴェネチア・ビエンナーレでの受賞やドイツ銀行によるアーティスト・ オブ・ザ・イヤーの選出など、国際的にも高く評価されているアーティスト・田中功起。その映像作品《可傷的な歴史(ロードムービー)》が、2月11日〜14日に京都のTHEATRE E9 KYOTOで上映される。

 田中は、これまで《一台のピアノを五人のピアニストが弾く》《ひとつの詩を五人の詩人が書く》など、複数の人が共同して同じことを行うことで、人と人との協働に焦点を当てた作品を制作してきた。

 いま、世界各地で分断が生み出され、差別や排斥などの問題がますます顕在化している。とくにコロナ禍のなかで、その問題はより深刻になっている。本作は、在日コリアン3世と日系スイス人のふたりの対話から、異なる背景を持つ人々が「いかに共に生きるのか」という問いを投げかけるもの。2018年にミグロ現代美術館で発表された本作は、19年に行われた「シアターコモンズ'19」で上映され、日本国内で初めて公開。今回は、関西での初上映会となる。

 初対面のふたりは、荒川や川崎を旅して在日コリアン排斥の過去と現在に出会ったり、関東大震災後の虐殺の現場やヘイトスピーチの行われた地域を移動しながら関連する法律を読み上げたりすることで、少しずつ心を開き、いままで語れなかった感情を言葉にしていくという作品だ。

 なお会期の初日と最終日には、本作のプロジェクトアドバイザー・レクチャラーであるハン・トンヒョンなどをゲストに迎え、アフタートークが開催。3月初旬には、田中の近年のテキストを集めた『リフレクティブ・ノート(選集)』(アートソンジェ、美術出版社)も刊行予定だ。作家本人やゲストの言葉とともに、社会の深奥を紐解く本作をチェックしてほしい。

編集部

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