文化庁は3月7日、美術、音楽、演劇映画など芸術11部門において優れた業績を上げた、または新生面を開いた人物に対して贈る平成30年度(第69回)の芸術選奨文部科学大臣賞19名と同新人賞11名の受賞者を発表した。
美術関係ではアーティストの小沢剛と内藤礼が「美術」部門大臣賞に、建築家・石上純也が同新人賞に選出。「評論等」部門では、アーティストで批評家の岡﨑乾二郎が大臣賞に選ばれた。
既存の歴史観や制度、日本の近代美術史や教育制度に対する批判的な視点をユーモラスに作品化してきた小沢剛。2018年に千葉市美術館で開催された14年ぶりとなる大規模個展「不完全-パラレル な美術史」展や、東京藝術大学陳列館「1940ʼs フジタ・トリビュート」展で展示された《また帰って来たペインターF》などが評価された。
いっぽうの内藤礼は、水戸芸術館現代美術ギャラリーで過去最大規模の個展「明るい地上には あなたの姿が見える」を開催。ギャラリー全体をひとつのインスタレーションとし、自然光のみで作品を見せるという試みで大きな注目を集めたことは記憶に新しい。今回の受賞では、「ひそやかではあるが強靭な作品は、『地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか』という作家の根源的なテーマを追究するものであり、その高い完成度と相まって、際立った達成を示した」と評価されている。
評論等で大臣賞となった岡﨑乾二郎は、18年に単著『抽象の力』(亜紀書)を刊行。抽象芸術を「設計思想」からとらえ直し、これまで語られなかった美術史・美術批評への接近を試みたことが「果敢な挑戦」として評価され、受賞につながった。
なお美術部門の選考審査員は、伊東正伸、内田篤呉、小川敦生、片岡真実、内藤廣、名児耶明、福田美蘭、南雄介、森山明子、柳原正樹の10名。評論等部門は今福龍太、河合祥一郎、川村湊、木下直之、玉蟲敏子、村山匡一郎、渡辺裕の7名が選考審査員を務めた。