東京都中野区新井3丁目(旧・東京府豊多摩郡野方村)に1983年まで存在した「豊多摩刑務所」。豊多摩監獄や中野刑務所の名でも呼ばれた同所は、おもに治安維持法によって弾圧された大杉榮、小林多喜二、中野重治、三木清をはじめとする様々な文学者、評論家、学者らが収監された場所として知られる。
また、構造と意匠の統一を目指す「真善美」を標榜した建築家、後藤慶二(1883〜1919)の設計による同建築は、大正期の日本のモダニズム建築を代表する作品としても名高い。
現在はレンガ造りの正門1棟のみが残されているが、中野区によるとこの敷地は2019年度、平和の森小学校の移転用地としての取得を予定。区は、正門の今後のあり方について広く意見を聴取したうえで、方針を決定するという。
中野区が想定する保存方法は、現時点で主として以下の5案。その中には「解体」の文字も見られる。
1:現地保存(内部見学も可能) 現地から動かすことなく、守衛室の1室に常設展示、もう1室をイベントに活用するなどして、内部への出入り可能な形で保存する。 2:現地保存(外部見学のみ可能) 現地から動かすことなく、外部からの見学に限定する形で保存する。 3:移築 基礎部分を地中から水平に切断し、建物そのものをリフトアップした後、レールに乗せて水平移動して、移転場所にて、移動によるダメージの修復を行う。 4:一部保存 解体し、正面一面のみをスライスし、別の建物の壁面に貼り付ける形で保存する。高さ8.7m、横幅13.5m、奥行2m程度を想定。 5:記録 解体し、記録映像、復原模型を作成し、公開できるようにする。
意見はメール、ファックス、郵便などで10月26日まで受付。また本件に関して10月14日14時より意見交換会を予定しているという。