中西夏之(1935〜2016)は、1958年に東京藝術大学を卒業。63年には高松次郎や赤瀬川原平とともに、前衛芸術グループである「ハイレッド・センター」を立ち上げ、従来の美術制作の枠組みを超えた芸術運動で注目を集めた。
90年代からは、絵画制作と連動して、展示空間に密接な関わりを持つインスタレーション作品シリーズ「着陸と着水」を展開するなど、空間だけでなく地理的な形態や歴史を統合した作品を制作してきた。
本展では、同シリーズ最後の作品《着陸と着水XIV 五浦海岸》を展示。垂直に立つ真鍮板と、砂や鋼の球体の反射で構成された本作は、岡倉天心による「六角堂」(茨城県五浦海岸)を模したもの。「六角堂」は仏堂と茶室を融合したわずか4畳半の空間で、太平洋の水平線と茶碗に張った水平面を見ることができる瞑想の場であった。
中西が絵画に関する考察を重ねるなかで生まれたという本作は、見る者に、絵画の成り立ちについて考える機会を与えるだろう。