「きいちのぬりえ」の蔦谷喜一、未公開の肉筆画34点が初公開。NANZUKAで個展開催【2/2ページ】

初の一般公開

 本展では、蔦谷が1985年頃から日本画の技法を用いて制作した「童女百態シリーズ」34点を紹介。いずれもコレクターの曽田大資が蔦谷のアトリエに通い、長年にわたって収集・保管してきた作品であり、今回が初の一般公開となる。

 曽田は1983年に蔦谷と出会い、その作品世界に魅了されて収集を開始した。本展に寄せたコメントでは、蔦谷を「たんなるぬりえ作家ではなく、卓越した技量と豊かな感性を備えた日本画家として評価すべき」と述べている。

蔦谷喜一《あかとんぼ》(1988)
蔦谷喜一《うれしいひなまつり》(1988)

 なお、本展に合わせて『蔦谷喜一作品集 曽田コレクション』が刊行。同書には、「美少女の美術史」展(青森県立美術館、2014)のキュレーターを務めた美術史研究者・工藤健志による論考も収録される。工藤は蔦谷のぬりえを、戦前と戦後の視覚文化を結び直す「ミッシングリンク」と位置づけ、大正・昭和初期の「カワイイ」文化が戦後の少女表象へと受け継がれるうえで果たした役割に注目している。

 現代のマンガやアニメ、キャラクター文化にも通じる蔦谷の表現。その作品をノスタルジーの対象としてだけでなく、日本画と大衆文化をつなぐ美術表現としてとらえ直す機会となりそうだ。

蔦谷喜一《羽子板》(1988)