坂本龍一へのトリビュートとなる新作
中庭に面したスタジオBでは、坂本龍一が生前に残したピアノ演奏の打鍵データ(MIDI)を用い、大友の自動演奏ギターと共演させる新作サウンド・インスタレーション《Duo》が展示されている。本展の企画当初、大友から坂本への「トリビュート作品をつくりたい」という提案がなされた。本作では、坂本が2004〜05年に演奏した即興演奏の打鍵データを分析、自動演奏化。使用されているピアノは、1999年に坂本が特注で作製した実物である。



いっぽう、YCAM InterLabは大友のギター即興演奏の特徴を抽出し、再現する自動演奏装置を独自開発した。ギターの自動演奏装置は極めて稀な装置である。InterLabは大友の演奏姿を録画して解析し、奏法の癖を含めたロジックを分析。設計、制御、モーターの組み合わせに至るまで緻密に構築することで、大友の演奏特有のニュアンスを再現した。
ひとつの空間に配置された坂本のピアノと大友のギターは、それぞれ独立して駆動する。これは生前、2人が実際に即興セッションを行っていた際、その場の音に反応しながら掛け合っていたアプローチの再現でもある。本人たちが不在でありながら、その瞬間にしか生まれない「即興的」な演奏を生成し続ける作品となっている。
会場となるスタジオBはガラス窓に囲まれている。音響コントロールには不向きな環境だが、外の景色の変化とともに作品の表情が変わるよう、あえてガラス張りのまま公開されている(床にカーペットを敷くことで吸音処理を施している)。設置されたベンチに腰掛け、変化する外光や景色とともに生み出される音に耳を傾けたい。
1年以上にわたる対話によって生み出された大型インスタレーション
劇場スペースとして設計されたスタジオAでは、暗い空間のなかに、木造住宅の解体現場から引き取られた柱や梁を組み上げた巨大な構造体が出現する。頭上には約330個におよぶバケツや鉛筆削り、扇風機など家にあるものが吊り下げられ、異様な存在感を放っている。本作は、美術家・持田敦子、エンジニア・伊藤隆之、そして大友の共作による新作《Dance》である。


本作は、持田が継続して取り組むテーマ「踊る家」を起点としながらも、大友やYCAMチームとの1年以上にわたる対話を経て、まったく新しいかたちの作品として実現した。4ヶ所から吊り上げられた部材は、空中で家のかたちを形成するが、コンピューター制御によって動かされることで構造自体が変容していく。部材同士が擦れ合う音が空間に鳴り響く。
会場に立つ3本の柱が刻む一定のリズムのなかで、構造体の動きが不規則な音を生み出し、さらに頭上の物体一つひとつから直接音が発せられる。スピーカーを介さず各物体から発せられる音が空間全体で立体的に混ざり合い、物理的な振動となって鑑賞者の身体に届く。


通常はシステムにより自動稼働しているが、毎週土曜日に開催されるライブパフォーマンス「Play with 《Dance》」では、一般公募の市民やゲストミュージシャンなどのパフォーマーが集い、装置を手動で操作しながら即興のパフォーマンスを繰り広げる。会期中は大友の参加も予定されている。自動稼働のときとは作品の見え方もまったく異なるため、両方を見比べてその違いを体感したい。



















