ファッションデザイナーとして世界的に知られ、現在はアーティストとして活動するマルタン・マルジェラの個展が、群馬県高崎市および前橋市の4会場で開催される。主催はrin art association。会期は9月19日からで、rin art association、Shop rin art association、アーツ前橋での会期は12月20日まで。rin art association MAEBASHIのみ10月27日までとなる。
大規模個展を再構成
本展は、今年4月11日〜5月5日に東京の登録有形文化財・九段ハウスで開催された、日本初の大規模個展「MARTIN MARGIELA AT KUDAN HOUSE」で紹介された作品を中心に再構成するもの。高崎市のrin art associationをメイン会場に、前橋市のrin art association MAEBASHI(まえばしガレリア ギャラリー2)、Shop rin art association、アーツ前橋へと展開し、マルジェラのアーティストとしての活動を総体的に紹介する。前橋市内での展示は「前橋国際芸術祭2026」のプログラムとして位置づけられている。
マルジェラは1957年ベルギー・ルーヴェン生まれ。80年にアントワープ王立芸術学院を卒業後、ジャン=ポール・ゴルチエのアトリエを経て、88年にジェニー・メレンズとともにパリで「Maison Martin Margiela」を設立した。97年から2003年まではエルメスのウィメンズ・クリエイティブ・ディレクターを務め、08年にファッション界を離れて以降はビジュアルアートに専念。21年にはパリのLafayette Anticipationsで初個展を開催し、その後、北京やソウルなどへ巡回している。26年には九段ハウスでの個展に加え、タカ・イシイギャラリー 京都でも展覧会を開催した。
マルジェラの作品で中心的な主題となるのは、人間の身体や精神に起因する「オブセッション(執着)」だという。日常のなかで見過ごされがちな事物へと視線を向け、平凡なものを別の姿へと変容させながら、その背後にある本質や、私たちが当然のものとして受け入れている価値観を問い直す。
その代表的な表現のひとつが、身近なオブジェクトをフェイクファーで覆う作品だ。通常の機能から切り離されたオブジェクトは、表面を覆い隠されることによって、むしろその内側にある意味や存在そのものへと鑑賞者の意識を向けさせる。
また、マルジェラの制作では「過程」そのものも重要な要素となる。完成された状態へと閉じるのではなく、未完成を示唆することで、変化し続ける現実世界と作品を同調させる。古典美術やシュルレアリスム、キュビズムといった美術史上の潮流との接続も試みながら、既存の文脈や概念を更新していくという。
ファッション時代から匿名性を貫いてきたマルジェラにとって、「不在」もまた制作を読み解く重要なキーワードだ。不在を通して存在を浮かび上がらせるという二極的な構造は、多くの作品に通底している。各会場を横断する今回の展覧会は、マルジェラがファッションを離れた後、どのような問題意識をアートの領域で追究してきたのかを知る機会となりそうだ。





















