今週末に行きたい展覧会ベスト10。マリー・ローランサンからCURATION⇄FAIR、ARTISTS' FAIR KYOTO、高木由利子展まで

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「ARTISTS' FAIR KYOTO 2024」より 撮影=顧剣亨

美術史の流派に収まらない画家。「マリー・ローランサン ─時代を写す眼」(アーティゾン美術館)

 20世紀前半に活躍した女性画家、マリー・ローランサンの画業を複数のテーマから紹介する展覧会「マリー・ローランサン ―時代をうつす眼」が、3月3日にアーティゾン美術館で閉幕する。レポート記事はこちら

展示風景より、手前はマリー・ローランサン《帽子をかぶった自画像》(1927頃)

 ローランサンは、キュビスムの画家として紹介されることも多くあるが、「前衛的な芸術運動」や「流派(イズム)」を中心に語る美術史のなかにうまく収まらない存在でもある。同時代の画家マティス、ドラン、ピカソ、ブラックなどに影響を与えられながらも、彼らの様式を模倣することなく、パステルカラーの独自の画風を生み出した。

 本展では石橋財団コレクションや国内外の美術館から、ローランサンの作品約40点、挿絵本などの資料約25点に加えて、ローランサンと同時代に活躍した画家たちの作品約25点、合計約90点を展示。関連画家たちの作品と比較しつつ、彼女の作品の魅力に迫る。

会期:2023年12月9日〜2024年3月3日
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2 
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00、2月23日を除く) ※入場は閉館の30分前まで 
料金:ウェブ予約チケット 1800円 / 窓口販売チケット 2000円 / 学生無料(要ウェブ予約) ※日時指定予約制

「もの」の質と美に焦点を当てる。「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る」(kudan house)

 一般公開されていない東京・九段下の登録有形文化財「kudan house」。ここを舞台に、展覧会とアートフェアの2部で構成される新しいアートイベント「CURATION⇄FAIR」が開幕。展覧会パートとなる「美しさ、あいまいさ、時と場合に依る(The beautiful, the ambiguous, and itself)」が、3月3日に会期終了する。レポート記事はこちら

展示風景より、青木野枝《霧と山 2020-11》(2020)

 インディペンデント・キュレーターとして活躍する遠藤水城がキュレーションするこの展覧会では、川端康成と大江健三郎の文化論を起点に、古美術から現代美術まで、時代やジャンルを超えた作品が集結。人間中心的な視点ではなく、「もの」の質と美に焦点を当てる。

 1階〜3階の居住空間では、李朝の白磁壷や川端康成の書、主に鉄を用いた立体作品を多くの芸術祭や個展で発表してきた青木野枝の作品などを紹介。また、ボイラー室などがある地階では、アーティストの橋本聡が手がける新作群と、シベリア抑留を生き抜いた香月泰男の絵画がともに展示されている。

会場:kudan house
住所:東京都千代田区九段北1-15-9
会期:2024年2月21日〜3月3日
開館時間:平日 10:00〜21:30 / 土日祝 10:00〜21:00 / 3月3日 10:00〜18:00 ※最終入場は各日終了30分前まで
入場料:一般 2500円 / 学生 1500円

アナログとデジタルの在り方を見直す。「MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ」(東京都現代美術館)

 「シナジー、創造と生成のあいだ」をテーマに、東京都現代美術館で開催中のMOTアニュアル。同展も3月3日に幕を閉じる。レポート記事はこちら

展示風景より、やんツー《TEFCO vol.2 〜アンダーコントロール〜》(2023)

 今年で第19回目の開催となるMOTアニュアル。タイトルにある「創造と生成」はそれぞれ「アナログ」「デジタル」を指しており、アーティストらの想像力や手仕事による「創造」と、昨今社会的にも注目されている人工知能やNFTなど、その有り様を反映して生まれる「生成」のあいだに生まれるものに注目するのが本展の開催意図と言える。

 荒井美波、後藤映則、(euglena)、Unexistence Gallery(原田郁/平田尚也/藤倉麻子/やんツー)、やんツー、花形槙、菅野創+加藤明洋+綿貫岳海、Zombie Zoo Keeper、石川将也/杉原寛/中路景暁/キャンベル・アルジェンジオ/武井祥平、市原えつこ、友沢こたおといった11組の作家による約50点の作品が展示されている。

会期:2023年12月2日〜2024年3月3日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで 
料金:一般 1300円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 900円 / 中高生 500円 / 小学生以下無料

虎ノ門ヒルズに新しいギャラリーがオープン。「葛飾北斎|PLAY w/ HOKUSAI」(art cruise gallery by Baycrew’s)

 アパレルや飲食店等を展開するベイクルーズによるアートギャラリー「art cruise gallery by Baycrew’s(アート クルーズ ギャラリー バイ ベイクルーズ)」が、東京の虎ノ門ヒルズに2月29日オープンした。レポート記事はこちら

展示風景より

 こけら落としとして開催されているのは、葛飾北斎による『北斎漫画』から北斎の遊び心に注目し厳選された80点で構成する展覧会「PLAY w/ HOKUSAI」だ。『北斎漫画』蒐集家・浦上満や、ディレクター・佐々木真純(ART&REASON)、クリエイティブディレクター・おおうちおさむの協力を経て実現する本展では、来場者がよりアートを身近に感じながら、鑑賞や購入といったアート体験を楽しむことができるだろう。

 また、同展の開催に合わせギャラリーでは、メインビジュアルとして取り上げている『北斎漫画』の虎の刺繍をあしらったスカジャンも販売中。今後は、「アートを日常に落とし込む」という視点から絵画、写真、彫刻、デザイン、映像といった多岐にわたるテーマで展覧会も実施していく予定だという。

会期:2024年2月29日〜4月14日
会場:art cruise gallery by Baycrew’s
住所:東京都港区虎ノ門2-6-3虎ノ門ヒルズ ステーションタワ ー3F SELECT by BAYCREW’S 内
開館時間:店舗営業時間に準ずる 
料金:無料

VRを使った雨宮庸介の新たな創造に迫る。「まだ溶けていないほうの山梨県美」(山梨県立美術館)

 2023年に山梨県立美術館で立ち上がった新しい企画シリーズ「LABONCH」。その第2弾として雨宮庸介の個展「まだ溶けていないほうの山梨県美」が始まっている。レポート記事はこちら

展示風景より、《まだ落ちていないほうの吊り下げ照明》と《Apple》

 雨宮は1975年茨城県生まれ。多摩美術大学美術学部油画専攻卒業。山梨県在住。第15回グラフィックアート「ひとつぼ展」グランプリ。現公益財団法人江副記念リクルート財団の奨学生として2011年に渡欧し、以降、ベルリンに拠点を構え、22年に帰国。現在は日本を拠点に活動している。

 本展は美術館エントランスの吹き抜けにある「ギャラリー・エコー」と、1階ロビーの2ヶ所で展開される。ギャラリー・エコーでは、ともに「時間」を扱った作品である《まだ落ちていないほうの吊り下げ照明》と《Apple》を組み合わせた「リアル」の作品が展示。本展のメインである《VRまだ溶けていないほうの山梨県美》は、ロビーに置かれた椅子に座り、VRヘッドセットとヘッドホンをつけて体感する作品だ。

会期:2024年2月27日~3月24日 ※3月4日~11日は館内整備のため臨時休館
会場:山梨県立美術館
住所:山梨県甲府市貢川1-4-27
電話番号:055-228-3322
開館時間:9:00〜17:00 ※3月17日は14:00~14:30のあいだ、VRゴーグルを用いた仮想空間体験は休止
休館日:月、祝日の翌日(日曜日の場合は開館)、3月4日~11日
料金:無料

新たな会場も。「ARTISTS' FAIR KYOTO 2024」(京都国立博物館 明治古都館ほか)

 2018年の初回以降、毎年開催されているアートフェア「ARTISTS' FAIR KYOTO」(以下、AFK)。7回目となる「ARTISTS' FAIR KYOTO 2024」が3月1日〜3日の会期で開催されている。レポート記事はこちら

展示風景より

 今年は、ボスコ・ソディ、やんツーら16組が務めるアドバイザリーボードと公募により選出された若手アーティスト45組が参加。会場もインダストリアルな空間で作品を演出する京都新聞ビル 地下1階のほか、京都国立博物館 明治古都館が新たな会場となった。加えて、世界遺産である清水寺では、アドバイザリーボードによる展覧会が3月10日まで開催される。

 またAFKでは一昨年から参加アーティストの支援を目的としたアワードも実施しており、今年の「マイナビ ART AWARD」では最優秀賞(賞金100万円)に志賀耕太が、優秀賞には遠藤文香、久村卓、松元悠が選ばれた。これらの作家を含む44組とアドバイザリーボードの作品をぜひ各会場をめぐりながら堪能してほしい。

会期:2024年3月1日~3月3日(音羽山 清水寺でのアドバイザリーボードによる展覧会は3月10日まで)
会場:京都国立博物館 明治古都館(京都市東山区茶屋町527)、京都新聞ビル 地下1階(京都市中京区烏丸通夷川上ル少将井町239)、音羽山 清水寺(京都市東山区清水1-294)
開館時間:9:30~17:00(京都新聞ビル・音羽山 清水寺は10:00〜) ※入場は16:30まで
単館券:京都国立博物館 明治古都館 一般 2000円 / 大学生 1000円、音羽山 清水寺 600円
セット券:一般 2500円 / 大学生 1500円
※京都新聞ビル 地下1階は無料

20世紀の名作椅子を楽しむ。「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」(日本橋髙島屋S.C.本館)

 東京・日本橋の日本橋髙島屋S.C.本館で、織田コレクションから100脚の名作椅子を紹介する「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」がスタートした。レポート記事はこちら

展示風景より、「第2章 デザイン革命 モダニズム」

 織田コレクションとは、椅子研究家・織田憲嗣(おだのりつぐ)が長年かけて収集・研究してきた、20世紀の優れたデザインの家具と日用品のコレクション。その種類は、北欧を中心とした椅子やテーブルから照明、食器やカトラリー、木製のおもちゃまでと多岐にわたる。また、写真や図面、文献などの資料を含め系統立てて集積されており、近代デザイン史の変遷を俯瞰できる学術的にも極めて貴重な資料として世界的にも高い評価を得ている。

 本展は、大きく分けて5つのエリアで構成。アール・ヌーヴォーやバウハウス、ミッド・センチュリー、イタリアン・モダンまで、20世紀におけるデザインの変遷を、同コレクションから厳選した100脚の名作椅子を通じて俯瞰する。

会期:2024年2月29日~3月18日
会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
住所:東京都中央区日本橋2-4-1
開館時間:10:30〜19:30(最終日〜18:00)※入場は閉場の30分前まで 
料金:一般 1200円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下無料

身近な場所でアートを鑑賞する。「有楽町ウィンドウギャラリー2024」(丸の内仲通りの商業店舗)

 東京・丸の内仲通りの商業店舗数店で現代アートを展示・販売するイベント「有楽町ウィンドウギャラリー」。その第3回が3月1日に始まった。レポート記事はこちら

有楽町ウィンドウギャラリー2024の展示風景より、壁面の絵画はbois de gui(フラワーショップ)で展示中の浅野友理子の作品

 同イベントは、三菱地所が一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン、一般社団法人日本現代美術商協会(CADAN)とともに2022年に立ち上げたもの。今年は、浅野友理子、河本蓮大朗、佐藤翠、篠崎由美子、杉山功、ステファニー・クエール、玉山拓郎、山本万菜といった8名のアーティストが参加している。

 例えば、ペイント、陶芸、テキスタイルなど、メディアを横断した幅広い創作活動をする山本万菜は、キャラメル専門店・NUMBER SUGARで絵画作品《Somewhere not here》を発表。古布や古着などの既製品を、織機を使って新たな布へ再構築する作品に取り組む河本蓮大朗は、シューズショップ・Allbirdsで「Strata」と「Weaving」といったふたつのシリーズを展示している。アパレルやフラワーショップなど身近な場所でアートを鑑賞するユニークな機会をお見逃しなく。

会期:2024年3月1日~24日
会場:丸の内仲通り沿いの商業店舗8軒
住所:東京都千代田区有楽町1丁目、丸の内3丁目
料金:無料 ※ただし「TexturA」での玉山拓郎の作品鑑賞には店内飲食の利用が必要。

「桜」を独特な視点でとらえる。「高木由利子 写真展  chaoscosmos vol.2 - sakura - カオスコスモス 弐  - 桜 -」(GYRE GALLERY)

 表参道のGYRE GALLERYで、2022年に続きフォトグラファー・高木由利子の写真展「- chaoscosmos vol.2 - sakura -」が3月1日にスタートした。

展示風景より

 高木は東京生まれ。武蔵野美術大学にてグラフィックデザイン、イギリスのTrent Polytechnicにてファッションデザインを学んだのち、写真家として独自の視点から衣服や人体を通して「人の存在」を撮り続ける。近年は自然現象の不可思議にも深い興味を持ち、「chaoscosmos」というプロジェクトにて映像を含め新たなアプローチに挑戦し続けている。

 2022年、高木は同ギャラリーで写真展「-chaoscosmos vol.1 -icing process-」を開催し、水が氷に変貌する過程をレンズを通し肉眼ではとらえることの出来ない自然現象に潜むメッセージを受け取った写真作品を発表。第2弾となる本展では、日本人が愛してやまない「桜」を独特な視点で儚さや潔さに翻弄されながら撮り続ける作品が展示されている。

会期:2024年3月1日〜4月29日
会場:GYRE GALLERY 
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
電話番号:0570-05-6990(ナビダイヤル、11:00〜18:00)
開館時間:11:00~20:00
休館日:会期中無休
料金:無料

江戸東京の伝統産業事業者とコラボ。「江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園でみる匠の技と現代アートの融合-」 (旧岩崎邸庭園)

 「現代アート×伝統産業」による新たな価値を伝える展覧会として、アーティスト舘鼻則孝を展覧会ディレクターとして招聘した「江戸東京リシンク展」。今年は3月1日〜10日の会期で行われる。

 本展は、国の重要文化財に指定されている旧岩崎邸庭園を会場に開催。鹿鳴館の建築家として有名な英国人ジョサイア・ コンドルの設計による洋館、撞球室、和館が現存しており、館鼻ディレクションの新作を含む様々な作品を、歴史ある空間とともに楽しむことができる。

 今年コラボレーションする江戸東京の伝統産業事業者は以下の通り。江戸うちわ・江戸扇子 伊場仙、江戸刷毛・東京手植ブラシ 宇野刷毛ブラシ製作所、江戸組子 建松、新江戸染 丸久商店、和太鼓 宮本卯之助商店、東京くみひも 龍工房、金唐革紙 金唐紙研究所[特別協力]。

会期:2024年3月1日〜10日
会場:旧岩崎邸庭園
住所:東京都台東区池之端1-3-45
開園時間:9:00〜17:00 ※入園は16:30まで
入園料:一般 400円 / 65歳以上 200円 / 小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料

編集部

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