東京・丸の内仲通りの商業店舗数店で現代アートを展示・販売するイベント「有楽町ウィンドウギャラリー」。その第3回が3月1日〜24日の会期で開催されている。
同イベントは、三菱地所が一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン、一般社団法人日本現代美術商協会(CADAN)とともに2022年に立ち上げたもの。カルチャー・ヴィジョン・ジャパンの深井厚志は2月29日に行われた報道内覧会で、同イベントはコロナ禍中に「この街に対して何か芸術の力でできることはないか。丸の内仲通りを訪れる人々とアートの相性が良いのではないかと」という思いで同取り組みを始めたとしつつ、次のように話している。
「作品を店舗のなかに飾ることで鑑賞体験は変わる。例えば、好きな洋服の隣で作品を見ることでその見え方がまったく違っていたり、あるいは生活空間の延長線上に見えるような場所で作品を鑑賞することで、それを持ち帰って自分の部屋で飾ることが想像できたりする。生活と身近なところで現代アートを感じてほしい」。
今年のイベントでは、浅野友理子、河本蓮大朗、佐藤翠、篠崎由美子、杉山功、ステファニー・クエール、玉山拓郎、山本万菜といった8名のアーティストが参加している。例えば、ペイント、陶芸、テキスタイルなど、メディアを横断した幅広い創作活動をする山本万菜は、キャラメル専門店・NUMBER SUGARで絵画作品《Somewhere not here》を展示。同作は「心軽やかな幸せがどこにでもあること」を願い、制作したという。
古布や古着などの既製品を、織機を使って新たな布へ再構築する作品に取り組む河本蓮大朗は、シューズショップ・Allbirdsで「Strata」と「Weaving」といったふたつのシリーズを発表。作品にはAllbirds製品の端切れも用いられており、オーガニックウールや植物染料など環境負荷の少ない素材や技術を中心に使うことで、同ブランドへの共感と調和をかたちにしている。
植物画を主な題材とし、植物にまつわるエピソードや土地に長く伝わる知恵や知識にも着目し、現代的な問題意識を内包した作品を発表する浅野友理子はフラワーショップ・bois de guiで、韓国から宮城に嫁いできたという女性に教えてもらったツルニンジンや、自宅の庭に祖母が植えたホトトギスを描いた作品を展示。様々な土地での記憶を感じとることができる。
三菱地所の西本龍生(NPO法人大丸有エリアマネジメント協会 アートアーバニズム担当ゼネラルマネージャー)は、「私たちは、『アートが育つ街はビジネスが育つ街』という仮設を立てている」とし、次のように語っている。「クリエイティブシティでは企業マインドも変わる。新たなイノベーションの種ができれば素晴らしい」。
丸の内エリアでは、約35万人が5000の会社に通っているという。西本はこう続ける。「今回のような機会で初めてアートを買うことで、自分のなかに新たなマインドが生まれ、仕事の見方やライフスタイルも変わるかもしれない。そういう変化が生まれることを期待している」。