今年は、東日本大震災から10年目を迎える節目の年だ。当時被災し、臨時の避難場所にもなった水戸芸術館では、2012年に展覧会「3.11とアーティスト:進行形の記録」を開催。「作品」に限定せず、震災を受けて行われたアーティストによる様々な活動を時間軸に沿って紹介した。
それから10年、アーティストたちはどのように震災を語り継ごうとしているのか。「想像力の喚起」という芸術の本質にあらためて着目し、その実践を紹介するのが「3.11とアーティスト:10年目の想像」だ。会期は2月20日~5月9日。
参加作家は、加茂昂、小森はるか+瀬尾夏美、佐竹真紀子、高嶺格、ニシコ、藤井光、Don’t Follow the Wind。
高嶺格は、福島第一原発事故を受けた人々の会話を再現した《ジャパン・シンドローム水戸編》(2012)を展示。震災直後から陸前高田に通い続けた小森はるか+瀬尾夏美は、現地で見た風景や聴いた言葉を、絵やテキスト、映像などで表した作品を通して、10年間という年月の経過、そのなかの変化を見つめる。
また藤井光は、震災の禍根をいかに表現し語り継ぐかを探求する過程で、いじめや差別など、福島の人々の「心の問題」に直面。また2020年は、新型コロナウイルス感染症が人々を不安に陥れた年でもあった。藤井は、未知のもの・見えないものに対する「恐怖」が芽生えさせる根拠のない差別意識を、世界各地の人々が反対の声を挙げた黒人差別と重ね合わせた。今回は、キング牧師の暗殺を受けて白人の差別意識を嘆いたあるアメリカ人教師が行った1960年代の伝説の授業を、県内の教育者の協力を得て3.11後版として書き換え、日本の小学生とともに再演し、新作として発表する。
加えて本展では、震災にまつわる手記やコメントを残す場が設けられるほか、防災ワークショップなども予定されている。