EXHIBITIONS

道草展:未知とともに歩む

露口啓二 「自然史」より《東北太平洋岸・南相馬市・井田川浦》 2015

ロイス・ワインバーガー 燃焼と歩行 ドクメンタ10の記録写真、1997 Courtesy of Studio Lois Weinberger and Krinzinger Gallery, Vienna ※参考図版

ミックスライス つたのクロニクル 2016

ウリエル・オルロー ムティ(薬) 2016-18

ロー・ヨクムイ(羅玉梅) 殖物 2019

上村洋一 phantom power 2019 撮影=加藤健 ※参考図版

 国内外で活躍するアーティストの作品を通して、人間と環境のつながりを考える現代美術の展覧会。本展には、植物にまつわる歴史や人ならざるものの存在に目を向けてきた6組のアーティスト、上村洋一、ロー・ヨクムイ、ミックスライス、ウリエル・オルロー、露口啓二、ロイス・ワインバーガーが参加する。

 異常気象や環境汚染など、今日、人間の営みが環境に与える影響はそのあり方を問われる重大な局面にある。本展は、こうした自然環境に対する社会的意識の高まりを背景に、植物への関心やフィールドワークから生まれたドローイングや写真、映像、インスタレーションなどの様々な表現を通して、人間がその環境とともに歩んできた道のりを考察する。

 人為による撹乱が激しい環境に生きる人里植物を創作の源に、自らの創作を「純正や真実の美学、そして秩序の力に抗する」実践として位置づけるロイス・ワインバーガー、写真によって出来事の結果をたんに写し取るのではなく、環境のなかに身を置くことで、そこに起こり続ける変化をとらえることを試みる露口啓二、様々な人種や文化が交差する場所・香港の風景や地理に目を向け、自身の故郷の歴史と急速な社会変化を映し出す詩情豊かな作品を制作するロー・ヨクムイ。

「移住」や「労働」「共同体」をテーマに、ときに特定の状況に置かれた個人やコミュニティと共同しながら、多様なメディアを用いた作品制作を行うミックスライス、丹念なリサーチに基づき、歴史や表象が取りこぼしてきたものの記憶を喚起する空間的な作品を展開するウリエル・オルロー、フィールドレコーディングによって世界各地の環境にアプローチし、その行為を「瞑想的な狩猟」としてとらえつつ、人間と自然との曖昧な関係性を考察する上村洋一。

 本展では6組の日本初公開作品や新作、遺作を含む約40作品を展示し、人間活動とは切り離せない普遍的テーマである「人間とその環境とのつながり」を掘り下げる。

 また会期中には、人間と環境のつながりの「これから」を参加者とともに想い描く関連プログラムも行い、一人ひとりが地球規模の問題や共存社会を思考する機会を創出する。