田中一村展―千葉市美術館収蔵全作品(千葉市美術館、2021年1月5日〜2月28日)
千葉市に20年住んだのち、50代になって奄美大島に移住。亜熱帯の花鳥や風土を題材にした独特の日本画を描く田中一村(1908〜1977)。生前、それらの作品を公表する機会もなく無名のまま没したが、没後ブームのようにして全国に知られるようになった。
2010年に千葉市美術館は、田村の作品の基礎的な調査に立ち返り、その新たな全体像を示して大きな反響が「田中一村 新たなる全貌」展を開催している。それから10年を経て、千葉市美術館に収蔵された田中一村の作品は寄託を含めて100点を超えた。さらに2018年度には、一村の最大の支援者であった川村家より、残る作品・資料の寄贈等を受ける。本展はそれらのすべてを初めて一堂に展示し、画家の生涯の未知の側面を探ろうとするものだ。
フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる(神奈川県立近代美術館 葉山、1月9日~4月11日) ※緊急事態宣言により1月12日より臨時休館
アイルランド生まれで、20世紀でもっとも重要な画家のひとりであるフランシス・ベーコン(1909〜1992)。その展覧会「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」が、2021年1月9日〜4月11日に神奈川県立近代美術館 葉山で開催。その後、渋谷区立松濤美術館に巡回する。
本展は、生前のベーコンと深い交流のあったバリー・ジュールのコレクションで構成されるもの。日本初公開となる作品・資料から、シュルレアリスムに傾倒した1930年代の油彩画、50年代より手がけた「教皇」シリーズのドローイング、自画像などの写真や書籍に色をつけたり線を描いたりした作品などを紹介。20世紀を代表する巨匠の制作の秘密に迫る。
GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?(愛知県美術館、1月15日~4月11日)
1960年代初頭よりグラフィック・デザイナーやイラストレーターとして活動を開始し、80年代には「画家宣言」によって画家・芸術家へと活動領域を移行。斬新なテーマと表現による作品を次々と発表し、国内外で現代美術家として高い評価を得ている横尾忠則。その、東海地方の美術館では初となる展覧会「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」が愛知県美術館で開催される。
横尾忠則の芸術の全貌を多角的に紹介するために、高校時代の作品からグラフィックや絵画の代表作、最新作まで、60年以上におよぶ制作活動の全貌に迫る作品群を展示。その規模は、過去の個展と比較しても最大級のものとなる。
平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989-2019(京都市京セラ美術館、1月23日~4月11日)
1980年代後半から活動を続ける美術批評家・椹木野衣を監修に迎えた展覧会「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ) 1989-2019」が京都市京セラ美術館の新館「東山キューブ」で開催される。
本展について椹木は、「いま、不穏と呼ぶしかない令和の幕開けの渦中にあって、改めて30年あまりに及んだ平成の美術とは何であったのかについて、ここ京都の地から振り返ってみよう」と語る。「うたかた」と「瓦礫(デブリ)」をキーワードに、経済的な停滞と未曾有の災害に繰り返し見舞われた平成の美術を振り返る展覧会だ。参加するのは、Complesso Plastico、IDEAL COPY、DIVINA COMMEDIA、テクノクラート、GEISAI、東北画は可能か?、Chim↑Pom、contact Gonzo、DOMMUNE、パープルーム、クシノテラス、人工知能美学芸術研究会、「突然、目の前がひらけて」、國府理「水中エンジン」再制作プロジェクトの14グループおよび集合体。
Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示(アーティゾン美術館、2月13日~5月9日)
近年、アーティゾン美術館は、印象派や日本近代洋画など従来の核となるコレクションを充実させるいっぽう、抽象表現を中心とする20世紀初頭から現代までの美術、そして日本の近世美術にいたるまで、その幅を広げている。
新たなコレクションの一部は、アーティゾン美術館の開館以来少しずつ紹介されてきたが、まだ公開されていないものも多い。本展「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」は、抽象表現主義の女性画家たちによる作品や、アンリ・マティスのドローイング、19世紀から20世紀初頭の西洋の芸術家たちの肖像写真コレクションといった新収蔵品約120点を一挙に公開するもの。展示総数は約250点。美術館活動の根幹でもある作品収集・コレクションについて、あらためて考える機会ともなりそうだ。
まちへ出よう展〜それは水の波紋から始まった〜(ワタリウム美術館、2月7日〜6月6日)
1995年に屋外40ヶ所で展開された「水の波紋95」展を再び呼び覚まし、さらに現代のアーティストたちが集う展覧会「まちへ出よう展〜それは水の波紋から始まった〜」がワタリウム美術館で開催される。
「水の波紋95」展は、キュレーター、ヤン・フート (1936〜2014)とワタリウム美術館が協力して行った展覧会。青山や原宿の屋外40ヶ所に現代美術の作品を設置し、30日間という会期で人々に鮮烈な記憶を残した。本展では、当時発表された作品が一部再現されるとともに、Chim↑Pomなど現代に生きるアーティストたちの作品も紹介。「次なる波紋」へと広がって行くことを目指す。
3.11とアーティスト:10年目の想像(水戸芸術館、2月20日~5月9日)
東日本大震災から10年目を迎える2021年3月。当時罹災し、臨時の避難所となった水戸芸術館では、2012年に展覧会「3.11とアーティスト:進行形の記録」を開催した。同展では震災を受けてアーティストが行ったさまざまな活動を、芸術であるか否かを問わず、時間軸に沿って紹介。大規模な災害においてアートの意味や役割が問い直されるさなか、アーティストらがとった行動の大半は、支援と記録を主眼に置いたものだった。
10年後となる2021年、アーティストが「作品」を通して厄災に応答する「3.11とアーティスト:10年目の想像」展が、2月20日~5月9日に水戸芸術館 現代美術ギャラリーで開催される。同展では「想像力の喚起」という芸術の本質に改めて着目し、東日本大震災がもはや「過去」となりつつあるいま、当時幼かった世代や、10年目の我々、そして後世へと震災を語り継ごうとする作品群を紹介。東日本大震災が露わにした問題のひとつとして我々の「想像力の欠如」を挙げ、ものごとを想像する・させるという芸術の仕事のひとつを問い直す。参加作家は加茂昂、小森はるか+瀬尾夏美、佐竹真紀子、高嶺格、ニシコ、藤井光、Don’t Follow the Wind。
ミケル・バルセロ展(国立国際美術館、3月20日~5月30日)
スペイン現代美術界の巨匠ミケル・バルセロ。1982年に「ドクメンタ7」でデビューを果たして以来、絵画にはじまり、彫刻、陶芸、版画、そしてパフォーマンスにいたるまで、華々しい活躍をみせる。おおらかで大胆、繊細な感受性で、力強いエネルギーを創作物へと昇華させてきた。
国立国際美術館では3月20日~5月30日に、日本初となるバルセロの大規模個展を開催する。パリ、アフリカのほか、世界各地にアトリエを構えながら、モチーフの面でも多彩な相貌を見せるバルセロの芸術の全容を、代表作約100点によって紹介。巨大なカンバス作品、自在なかたちを作り出す陶製の作品、高度な技術と独創的な技法によるブリーチ(漂白)絵画、世界各地の風土をとらえたスケッチや水彩画などが紹介される。
マーク・マンダース ─マーク・マンダースの不在(東京都現代美術館、3月20日~6月20日)
彫刻や詩、単語、オブジェ等を用いたインスタレーション作品によって国際的に評価の高い現代美術作家、マーク・マンダース。その国内美術館としては初の個展「マーク・マンダース ─マーク・マンダースの不在」が2021年3月20日〜6月20日に東京都現代美術館で開催される。
マーク・マンダースは1968年オランダ生まれ、ベルギー在住。86年から「建物としてのセルフ・ポートレイト」をコンセプトに制作を行い、直近ではボンネファンテン美術館で大規模な個展(2020、オランダ)を開催しているほか、パブリック・アート・ファンド・プログラム(2019、アメリカ)や、ローキンスクエア(2017、オランダ)でも屋外彫刻を発表している。同展は、マンダースの初期の重要な作品やドローイングとともに、東京都現代美術館の展示空間に応じたインスタレーションで構成される。
ライゾマティクス_マルティプレックス(東京都現代美術館、3月20日~6月20日)
アーティスト、プログラマー、研究者をメンバーに揃え、ハード・ソフトの開発からオペレーションにいたるまでを、チームが一貫して取り組むフルスタック集団、rhizomatiksが2021年に設立15周年を迎える。その個展「ライゾマティクス_マルティプレックス」が、東京都現代美術館で2021年3月20日〜6月20日に開催される。
同展ではメイキングやアーカイブ展示を実施しつつ、rhizomatiksならではのクリティカルな提言を志向。ネットワーク社会における新たな人間の可能性と、未知の視覚ヴィジョンを追求する。
生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて(SOMPO美術館、3月23日~6月6日)
今年7月、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館を同敷地内に移転し、新たに開館したSOMPO美術館。ここで2021年3月23日~6月6日、「生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて」が開催される。
水平垂直線と原色の平面による代表作「コンポジション」シリーズで知られるモンドリアンの、日本では23年ぶりとなる展覧会だ。オランダのデン・ハーグ美術館所蔵のモンドリアン作品50点に加え、国内の美術館から借用するモンドリアン作品と国内外からの関連作家による作品約20点を展示する。
ホー・ツーニェン新作展(山口情報芸術センター、4月3日~7月4日)
ホー・ツーニェンは、シンガポールを代表するアーティスト。「あいちトリエンナーレ2019」では、戦中に特攻隊が任地へ発つ前最後の夜を過ごしたされる豊田市の旅館で、小津安二郎ら文化人の言動をモチーフとした作品《旅館アポリア》を発表し話題を呼んだ。
そんなツーニェンの新作展が、4月3日~7月4日に山口情報芸術センター[YCAM]で開催される。本展では、西田幾多郎や田辺元を中心に形成された学派である「京都学派」を取り上げ、テクノロジーの芸術表現への応用を探求し、美術だけでなく舞台芸術、映画の分野で知見を培ってきたYCAMとコラボレーション。VRを用いた新作の映像インスタレーションを制作する。
ライアン・ガンダー われらの時代のサイン(東京オペラシティ アートギャラリー、4月17日~6月20日)
インスタレーションや絵画、映像など多彩なジャンルで発表を行ってきたイギリスのアーティスト、ライアン・ガンダー。その東京の美術館では初となる大規模個展「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」が、東京オペラシティアートギャラリーで開催される。
「見る」ことについての洞察や日常経験の鋭い分析など、知的な好奇心があふれるガンダーの作品群。本展では新作を含め、空間全体をひとつの作品としてつくりあげることを目指す。またガンダーのキュレーションによる同館の収蔵作品展も行われる。ガンダーがプライベートコレクションをどのようにとらえるのか、その新たな視点にも期待が高まる。
アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人(森美術館、4月22日~9月26日)
ジェンダーをはじめとする多様なアイデンティティを正し、ダイバーシティを重視する動きが世界各地に広がる近年。現代アートにおいても、50~70年代に活動をはじめた女性アーティストたちに注目が集まっている。71歳から105歳まで、現在も各地で挑戦を続ける作家にフォーカスするのが、4月22日~9月26日に森美術館で開催される「アナザーエナジー展」だ。
参加作家はフィリダ・バーロウ、ミリアム・カーン、アンナ・ベラ・ガイゲル、三島喜美代、宮本和子ら16名。出身地はベイルート、イギリス、カイロ、スイス、ベルギー、韓国、日本など世界14ヶ国におよび、現在の活動拠点も多岐にわたる。本展ではそれぞれの実践から、フェミニズムや移民の歴史など世界の問題、そして美術史に対する様々な解釈を通覧。「アナザーエナジー」とは何かを考える。
イサム・ノグチ 発見の道(東京都美術館、 4月24日~8月29日)
彫刻から舞台芸術、家具、ランドスケープデザインまで、様々な分野に巨大な足跡を残した20世紀の代表的な芸術家、イサム・ノグチ(1904~1988)。アイデンティティの葛藤に苦しみながら独自の彫刻哲学を打ち立てたその足跡に迫る「イサム・ノグチ 発見の道」展が、4月24日~8月29日に東京都美術館で開催される。
3章構成の本展ではまず、太陽と月に見立てた光の彫刻「あかり」のインスタレーションを中心に、その彫刻の宇宙を広大な回遊式の会場で紹介する。また、父の故郷であった日本の文化の「軽さ」の側面に情熱を傾けたノグチの「かろみの世界」にも注目。そして、アトリエを構えた香川・牟礼に残された最晩年の彫刻の数々が、同所以外でまとめて公開される初の機会となる。
三菱創業150周年記念 三菱の至宝展(三菱一号館美術館、6月30日~9月12日)
三菱一号館美術館は、2020年7月から開催予定だった「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」を新型コロナの影響により延期。静嘉堂と東洋文庫の所蔵品から、国宝12点・重要文化財31点を含め、名品約100点が一堂に集結する本展が、2021年6月30日~9月12日に開催される。
三菱は、初代・岩崎彌太郎による1870年の「九十九商会」設立から1945年の財閥解体にいたるまで、4代にわたって文化財に多大な関心を抱き、豊かなコレクションを築いてきた。本展では、「奇跡の茶碗」とも呼ばれる《曜変天目》や俵屋宗達が描いた《源氏物語関屋澪標図屏風》をはじめ、幾度もの災難を経て今日の姿に甦った茶道具《付藻茄子》、そして『東方見聞録』など東西交流史における貴重な資料を紹介。東洋史、日本・東洋美術史をかたちづくったコレクションを展覧する。
KAWS TOKYO FIRST(森アーツセンターギャラリー、7月16日~10月11日)
両目が「✕✕」になったキャラクターで世界的に知られ、グラフィティや絵画からユニクロやディオールとのコレクションまで、幅広い活動を行うアーティスト・KAWS。その国内初となる大型個展「KAWS TOKYO FIRST」が、森アーツセンターギャラリーで開催。会期は2021年7月16日~10月11日。
2001年に渋谷パルコで開催された日本初個展と同じタイトルを冠し、「原点回帰」の思いが込められた本展では、コマーシャル/ファインアート双方の領域を網羅するKAWSの視覚的アプローチに迫り、約70点の絵画や彫像、プロダクトを紹介。また、KAWSが所有するプライベートコレクションのなかから、自身が影響を受けたアーティストの作品も展示される。
ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント(東京都美術館、9月18日~12月12日)
20世紀初頭にゴッホに魅了され、世界最大の個人収集家となったヘレーネ・クレラー=ミュラーは、ドキュメンタリー映画『ゴッホとヘレーネの森 クレラー=ミュラー美術館の至宝』も公開されるなど、昨今再び注目を集める存在だ。そのコレクションに焦点を当てる展覧会「ゴッホ展──響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が、9月18日~12月12日に東京都美術館で開催される。
注目したいのは、糸杉を描いたサン=レミ時代の《夜のプロヴァンスの田舎道》(1890)の16年ぶりの来日。本展では同作をはじめ、ヘレーネが初代館長を務めたクレラー=ミュラー美術館のコレクションから、ゴッホの初期から晩年までの画業をたどる絵画28点と素描20点を展示。また、ヘレーネが収集した他作家の作品や、ファン・ゴッホ美術館のゴッホ作品も紹介。20世紀初頭からゴッホの人気と評価が飛躍的に高まった背景にも注目する。
柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年(東京国立近代美術館、10月26日〜2022年2月13日)
柳宗悦の没後60年となる2021年。柳や濱田庄司、河井寛次郎らが日常の生活道具のなかに潜む美を見出し、生活と社会を美的に変革しようと試みた「民藝運動」。そんな実践に焦点を当てる展覧会「柳宗悦没後60年記念展『民藝の100年』」が、東京国立近代美術館で開催される。会期は10月26日〜2022年2月13日。
同展では、民藝のコレクションから選りすぐった陶磁器、染織、木工、蓑、ざるなどの暮らしの道具類と、大津絵をはじめとする民画、雑誌、書籍、写真、映像などの同時代資料をふんだんに展示。400点を超える作品・資料を展示する。民藝に広く注目が集まる現代、時代とともに変化し続けた民藝の軌跡を新たな視点から解き明かす。
生誕160年記念 グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生(世田谷美術館、11月20日~2022年2月27日)
アメリカの田園風景と、そこに暮らす人々の身近な出来事など、小さな幸せを描いたモーゼスおばあさん(グランマ・モーゼス)の作品群。その豊かな世界を紹介する展覧会「生誕160年記念 グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」が全国5都市で開催。世田谷美術館の会期は11月20日~2022年2月27日。
アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860~1961)は70代で本格的に絵を描き始め、80歳で初の個展を開催。大恐慌や第2次大戦で疲弊していたアメリカの人々の心をとらえ、一躍人気作家となった。生誕160年を記念する本展では、最初期の作品から100歳で描いた絶筆、愛用品や関連資料まで、初来日作品を含む約130点を紹介。グランマ・モーゼスの「素敵な100年人生」に触れる機会となる。
なお本展は、あべのハルカス美術館(2021年4月17日~6月27日)、名古屋市美術館(2021年7月10日~9月5日)、静岡市美術館(2021年9月14日~11月7日)、東広島市立美術館(2022年春)に巡回予定。