2020.12.10

柏の葉エリアの歴史を紐解く。東京藝大と三井不動産の共同プロジェクトに八谷和彦や渡邉英徳、片渕須直らが参加

2005年から「柏の葉スマートシティ」として、まちづくり事業が進められている千葉県柏市。このエリアの戦前の記憶をたどるプロジェクトが、東京藝術大学と三井不動産の共同で始まった。

1945年初夏、柏飛行場のMXY8「秋草」とパイロット 撮影=木村秀政 所蔵=田中昭重 提供=柴田一哉 
カラー化=渡邉英徳(「記憶の解凍」プロジェクト) カラー化監修=片渕須直
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 東京藝術大学は三井不動産株式会社協力のもと、千葉県・柏の葉における共催イベント「柏飛行場と秋水 - 柏の葉 1945-2020」展をスタートさせた。

 2005年から「柏の葉スマートシティ」として、三井不動産がまちづくり事業を推進している千葉県柏市つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅周辺。この柏の葉エリアには戦前、「柏飛行場」が存在していた。第二次大戦末期、柏飛行場では首都圏に迫るB-29を迎撃するため、「秋水」と呼ばれる日本初のロケット有人機が配備される予定で、グライダー機「秋草」による訓練やエンジンテストが行われていたという。

1945年初夏、「九九軍偵」に曳航された後、柏飛行場を飛行するMXY8「秋草」 ※秋草は、秋水の訓練機として制作された木製のグライダー 撮影=木村秀政 所蔵=田中昭重 パノラマ加工および提供=柴田一哉  カラー化=渡邉英徳(「記憶の解凍」プロジェクト) カラー化監修=片渕須直

 試験飛行に備えて試作2号機も終戦直前に納入されてたものの、敗戦とともにこれらの機体はすべて焼却。しかしながら、柏の葉周辺にはこの秋水の配備に備えた燃料庫や、戦闘機を隠すためにつくられた「えんたい壕」跡地がいまなお残る。本展では、こうした現代の街並みに残る「歴史の痕跡」をめぐりながら、映像、写真、模型、漫画など様々なメディアやアプローチにより、柏の葉に眠るエピソードを探るというものだ。

 参加作家は、八谷和彦、柏歴史クラブ、渡邉英徳(「記憶の解凍」プロジェクト)、柴田一哉(秋水研究家)、梅原徹、鈴木みそ、小林エリカ、市川義夫(秋水史料研)。

 「ロケット有人機」秋水の機体を検証するほか、航空研究者・木村秀政が撮った柏飛行場の写真をカラー化することで、柏飛行場で行われていた訓練や、その日常を回顧。また会期末の12月20日には、柏歴史クラブとともに柏の葉に残る戦争遺跡をたどるイベントを行う。