ダンサー田中泯による「形の冒険」がムカムカ版として復活。東京芸術劇場での公演をチェック

2018年秋、12年ぶりに劇場空間に復帰したダンサーの田中泯。今回、その際に披露された作品《―オドリに惚れちゃって!―「形の冒険」》が、「ムカムカ版」として進化し、池袋の東京芸術劇場で上演される。田中のダンスへの飽くなき追究と、革新的な身体美を堪能したい。上演期間は1月10日~16日。

2018年の舞台より Photo by Yoshie Tominaga

 クラシックバレエやモダンダンスを経て、1960年代より舞台芸術としての身体表現を始めた田中泯。今日、そのユニークな表現は、「舞台芸術」「ダンス」「音楽」「美術」などの枠からはとらえられない。

 田中は、ただ転がっているような踊りのかたちを「ハイパーダンス」と称し、裸体のダンサーとして世界各地をまわった70年代と、土方巽に出会い、ふたりだけの「恋愛舞踏派」を結成した80年代を経て、90年代にはソ連や東欧といった旧共産圏に潜入。解放運動に揺れる時代のなかでも密かに踊り続けた。

 40歳の頃から今日にかけては、土に接し、植物に触れ、日を浴び、風に当たるといった自然の連動のなかに参加し、また、もっとも素朴で原始的な労働である「農業」を生活の礎として、世界中の芸術家とのコラボレーションや映画出演など様々な活動を行ってきた。

2018年の舞台より Photo by Yoshie Tominaga

 そんな田中の一連の活動は、「人間はなぜ古代より踊りを踊ってきたのか」という、踊りの起源への憧れとこだわりが一貫されている。田中曰く「私は場所で踊るのではなく、場所を踊る」というように、いずれも身体の「生きる場所」そのものに疑いを持った表現だ。

 2018年秋、12年ぶりに劇場空間に復帰した田中。今回、その際に披露された作品《―オドリに惚れちゃって!―「形の冒険」》が、「ムカムカ版」として進化し、同劇場で上演されることが決定した(1月10日~16日。)。本作には、奥野瑛太、山本圭祐といった映画界で活躍する気鋭の俳優たち、そしてオーディションで選ばれた約10名が新たに参加する。美術、音響もさらに洗練度を高めた舞台上で、田中をはじめ各人が自らの存在をかけたソロを踊り、「個の身体」が有機的に響きあって新たな「オドリ」の世界を立ち上げるという。田中のダンスへの飽くなき追究と、革新的な身体美を堪能したい。

編集部

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