グレゴール・シュナイダーが示す「巡礼」の道。「アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS- 」(新開地地区、兵庫港地区、新長田地区)
やなぎみわとグレゴール・シュナイダーの2名のみが参加する新たな芸術祭「アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS- 」が、11月10日に閉幕する。
やなぎが野外劇《日輪の翼》を神戸市中央卸売市場本場内の特設会場で3日間のみ上演したのに対し、シュナイダーは《美術館の終焉─12の道行き》と題された作品を市内10ヶ所で展開。美術館を使わない本作は、シュナイダーにとって過去最大規模のものだ。鑑賞者は街をめぐりながら、キリスト受難の道を模した第1留から第12留までを巡礼するように体験することになる。
見どころは、10ヶ所のうちで最大規模となる第3留:旧兵庫県立健康生活科学研究所の《消えた現実》。2018年3月末で閉鎖された同施設では、人間の健康と、その裏側にある科学研究の痕跡の対比を垣間見ることができる。そのほかにも、第4留:メトロこうべの100メートルにおよぶ地下通路にまったく同じ部屋の連続をつくり出した《条件付け》、低所得男性労働者のための一時宿泊施設に残る生々しい痕跡を写し出す第8留:神戸市立兵庫荘の《住居の暗部》にも注目したい。
会期:2019年9月14日〜11月10日
会場:新開地地区、兵庫港地区、新長田地区
※開館時間、休館日、料金は会場によって異なる
港まちで「パノラマ庭園」をめぐる。「アッセンブリッジ・ナゴヤ 2019」(名古屋港~築地口エリア一帯)
名古屋の港まちを舞台に、街中で音楽と現代美術を中心とした多彩なプログラムを実施する「アッセンブリッジ・ナゴヤ 2019」が、11月10日に終了する。
アート部門では、2016年から継続するタイトルを冠した現代美術展「パノラマ庭園―移ろう地図、侵食する風景―」を開催。端から端まで徒歩15分ほどの港まちエリアを、作品を訪ねて散策するのが本展の鑑賞スタイルだ。
拠点となる「港まちポットラックビル」では、折元立身によるプロジェクト「おばあさんのランチ」のドキュメントや、幻の「名古屋オリンピック」にまつわる山本高之の作品を展示。港まちに約2ヶ月間滞在した青崎伸孝は同会場を含め、参加作家では最多となる6ヶ所の会場で作品を発表している。また、碓井ゆいは商店街の旧ガラス店で、港まちの女性と労働についてのリサーチを元にした作品を展示。千葉正也は、税関の職員研修のための旧寄宿舎のほぼ全室を使い、絵画や映像など、滞在制作による新作45点を発表している。
そして町歩きに疲れたら訪れたいのが、L PACK.が16年から継続して展開する人々の社交場《NUCO》。1階のカフェで楽しめるコーヒーや軽食で、ひと息つくのがおすすめだ。
会期:2019年9月7日〜11月10日
会場:名古屋港~築地口エリア一帯
電話番号:052-652-2511(アッセンブリッジ・ナゴヤ実行委員会事務局)
開館時間:11:00〜19:00(名古屋港ポートビル展望室 9:30〜17:00) ※入場は閉館の30分前まで
休場日:月、火、水(ただし祝日は開場)
料金:ブリッジパス 700円 ※「あいちトリエンナーレ2019」国際現代美術展1DAYパスおよびフリーパス、「名古屋市交通局」ドニチエコきっぷおよび一日乗車券提示の場合は600円
作品に表れる「文学」の多様性。「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」(国立新美術館)
現代美術における文学の多様な表れ方を展観する、国立新美術館の展覧会「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」。北島敬三、小林エリカ、ミヤギフトシ、田村友一郎、豊嶋康子、山城知佳子の6作家が参加する本展が、11月11日に閉幕する。
新作を発表しているのは田村、ミヤギ、小林、山城の4名。田村は有名ハンバーガーチェーンを軸としたリサーチに基づく映像インスタレーション《Sky Eyes》を、ミヤギは沖縄各地を撮影した写真と映像によるインスタレーション《物語るには明るい部屋が必要で》を発表。また「ウラン」と「オリンピック」をテーマとした小林は、原子力の起源から第二次世界大戦における使用を経て今日に至るまでの物語を、写真や映像、ドローイング、彫刻などによって構成した。
作品のなかで様々に立ち表れる「文学」に、じっくりと向き合うことができるこの機会をお見逃しなく。
会期:2019年8月28日~11月11日
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00~18:00(8・9月の金土 〜21:00、10・11月の金土 〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生・18歳未満無料