参加作家をやなぎみわとグレゴール・シュナイダーの2名に絞り、港町・神戸で新たに開催される「アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-」。その全作品の詳細が公開された。
やなぎは海に面した神戸市中央卸売市場で、代表作のひとつである《日輪の翼》を3日間限定で上演。同作は、やなぎ自ら輸入・デザインした台湾製の大型ステージトレーラーを舞台に、俳優のみならずタップダンサーやポールダンサー、和楽アーティストら多彩な出演者とともに各地で公演を行ってきた「巡礼劇」だ。今回は、恵比寿神の漂流と兵庫津で入滅した一遍上人の遊行に重ね、踊り念仏とともに上演される。
いっぽうシュナイダーは、市内8ヶ所で「美術館の終焉―12の道行き」と名付けられた作品群を発表。鑑賞者は第1留から第12留までを訪ね歩くことで、シュナイダー作品ならではの時空がねじれた非現実的な体験を堪能することができる。
なかでも注目したいのは、公共空間を使った大規模な作品の数々だ。高速神戸駅と新開地駅を結ぶ地下街「メトロこうべ」には、100メートルにおよぶ通路とシンクロする「浴室」をモチーフとした作品《条件付け》が出現。また駒ヶ林駅の地下通路では、アメリカ軍がキューバに設けた「グアンタナモ湾収容キャンプ」内の施設を再現した《白の拷問》を見ることができる。
加えて、低所得の男性勤労者のための一時宿泊施設として開設され、昨年その役割を終えた「神戸市立兵庫荘」で展開される《住居の暗部》や、感染症や食品などの検査室や研究室を有する「旧兵庫県立健康生活科学研究所」を舞台とした《消えた現実》など、都市の構造や歴史を可視化しながら「見えない恐怖」を呼び覚ます、シュナイダーの真骨頂とも言える作品も必見だ。
「神戸が『向こう側へ』行くために、あらゆるものを受け入れる街へと生まれ変わるためのアート・プロジェクト』である「TRANS-」。やなぎとシュナイダー、2組の作家による壮大な仕掛けをお見逃しなく。