『Wマガジン』2019年1月号の特集「Best in Show: Six artists who are taking their work to a new level(ベスト展覧会:新たなレベルに到達しつつある6人のアーティストたち)」に名を挙げられた気鋭のペインター、ヴォーン・スパンの個展「Scorched Earth and The Weeping Sun(焼け焦げた地球と涙する太陽)」が、東京・麻布のカイカイキキギャラリーで開催されている。会期は9月21日まで。
スパンは1992年アメリカ・フロリダ州生まれ。2014年にラトガース大学を卒業後、18年にイェール大学でアートにおける最高学位「MFA(美術学修士)」を取得した。現在はニュージャージー州ニューアークに生活と制作の拠点を置いている。
これまで、ニューアーク博物館やレジナルド・ルイス博物館(ボルチモア)、ルーベル・ファミリー・コレクション(マイアミ)などで作品展示を行ってきたスパン。今後は、アルミーナ・レック・ギャラリーなどで個展を開催する予定だという。
形式主義への探究心をもとに、色と線、そして形状というレンズを通して生み出される一連の作品群。美術史においてよく知られる様式を横断しながら、従来の枠にとらわれない素材を用いて私的かつ歴史的な物語を紡ぐことを試みているという。この過程からは、形式主義に心酔しながらも、制作から主観を切り離すことはできないことへの理解がうかがえる。
抽象と具象、そのどちらにも全力で取り組み、空間と時間、そして記憶を探求するスパン。本展を開催するにあたって次のようにコメントしている。「太陽は、自然界に存在する人類最大の共通資源だ。僕らはそれを、世界中のすべての人々と共有している。太陽はその輝きと暖かさで僕らに自分が生きていることを実感させてくれ、僕らが目覚めるとそこにいて、僕らが死ぬときに沈んでいく。地球に住む誰もが集団として深刻な非人道的事態を目の当たりにしているいま、僕はどうしても人類と自然の共生関係にフォーカスしたいと思った。世界は絶え間なく腐敗を続ける。地球温暖化に自然災害、集団テロ、そして堕落した政府… 地球は炎に包まれ、太陽は泣いている」