ベン・エドマンズは1994年イギリスのノリッチ生まれ。2016年にウィンブルドン・カレッジ・オブ・アートでファイン・アート・ペインティングの学士号、18年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートでペインティングの修士号を取得した。現在はロンドンに生活と活動の拠点を置いている。これまでロンドンやミラノ、ベルギー、香港、ニューヨークでの数々の展覧会やアートフェアに出展するなど、精力的に活動を行ってきた。
イギリスの地方に生まれ、アウトドアカルチャーに囲まれて育ったというエドマンズは、セーリングやウィンドサーフィン、マウンテンバイクなどに熱中。しかしながら、中産階級的な志向とスポーツの趣味が入り混じる環境で過ごすなかで、次第に「仕事と遊び」を旨とするカルチャーが、じつは陳腐さと神話に満ちていると感じるようになったという。
絵画制作を通じて、その「陳腐さ」と「人間の欲望を真摯に認める姿勢」を、複数の図像の統合を通じて表現することを試みるエドマンズ。例えば染められたキャンバスや炭素繊維を使った手づくりのコンポーネント、カラビナ、書き込まれた短いテキストによって、ペインティングの基礎を成す要素が「欲望」であることを表現し、また同時に「我々は満たされていない」という考え方を暗に示す。
現代の神話と信念体系を顕現させる一連の作品群は、主として抽象表現主義やカラーフィールド・ペインティング、そしてミニマリズムといった古典的とも言いうる様式を、エクストリーム・スポーツやファッションという現代的なアクセントと組み合わせながら描かれる。
こういったアイロニカルなアプローチを行うエドマンズの日本初個展「Where should I go from here?(私はここからどこへ向かえばよいのか?)」を、東京・南麻布のカイカイキキギャラリーで見ることができる。本展は、生産者対消費者という構造と折り合いをつけることが難しくなるいっぽうである現代の姿と対峙する空間となるかもしれない。