MADSAKIは1974年大阪府生まれ。幼少時に人種のるつぼであるニューヨークへ移住。アメリカのパーソンズ美術大学ファイン・アーツ科を卒業後、国際的アーティスト集団「Barnstormers」のメンバーとしての活動を経て、東京とニューヨークを拠点に活動を行ってきた。
細密なドローイングから巨大なインスタレーションまで幅広く手がけるMADSAKI。近年では、挑発的な言葉を用いたり、歴史上の名画を引用するなど、作品を通じて芸術の意味や作品の価値を問うている。
2016年には、過去の映画のワンシーンや政治家の肖像画、アーティスト・村上隆の代表的アイコン「お花」など、社会に氾濫する様々なイメージから引用されたアプロプリエーション的作品や、挑発的/風刺的なフレーズを用いたペインティングを発表。翌年には自身の妻を題材にしたプライベートな自己言及的アプローチを試みたシリーズを展開し、私小説的な表現へ到達した。
自身の拠点であるニューヨークのストリートカルチャーなどを背景に、日米の両方にまたがったアイデンティティを持つMADSAKIは、制作行為を通じて、ふたつの国の中間地点に居場所を見つけようと苦闘。繊細なスプレーワークによって、日常を愛おしむ眼差しと反骨精神を同居させた。
現在、東京・麻布のカイカイキキギャラリーで開催中の個展「MADSUCKY WUZ HERE 2018」は、MADSAKIが自身のリアルな感情と正面から向き合うべく、過去に現実逃避のために生み出した想像上の会話を掘り起こす作業から展開。ジョークや語呂合わせを用いながら、自身のアイデンティティおよび表現方法について再考する作品が並ぶ。
本展では、自信喪失やフラストレーションのなかにあっても、それに反抗するようにジョークを生み出し続けることをMADSAKIの哲学として、MADSAKIの作家としての進化や、人生のどのような局面にもユーモアを見出だすことができる人間の力に光を当てている。