金氏徹平は1978年京都府生まれのアーティスト。京都市立芸術大学在学中の2001年、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートに交換留学。03年に京都市立芸術大学大学院彫刻専攻を修了した。
フィギュアや雑貨、あるいは日用品などの身の回りにあるものをコラージュして立体作品などを制作してきた金氏。近年では彫刻、インスタレーション、絵画、写真、映像、装丁デザインのほか、2011年以降は舞台美術も手がけるなどさらに表現の幅を広げている。
おもな個展に「金氏徹平:溶け出す都市、空白の森」(横浜美術館、2009)、「Towering Something」(ユーレンス現代美術センター、北京、2013)、「金氏徹平のメルカトル・メンブレン」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川、2016)などがある。
代表作ともいえるTFCシリーズは、金氏がコンサートで後方からステージを見ている際に、人の頭がたくさん揺れ動く様子を、流動的なひとつの生き物として感じ取ったことから着想を得たもの。
金氏はこの体験を出発点に、自宅にあったフィギュアの毛髪だけを取り外し、コラージュの感覚で組み合わせながらシリーズとして制作を続けている。2005年の制作開始以来、これまでに約100体のTFCがつくられてきたが、世界の職人や技術者とのコラボレーションによってその造形や素材を大きく変容させてきた。
15年にイタリアのヴェネチア・ムラーノで行われたガラス職人とのコラボレーションでは、現地の職人がTFCを独自に解釈することで制作。より抽象的な造形への変容とヴェネチアンガラスという独特の質感に、金氏自身も驚いたという。また16年には、中国・北京でデジタルや3Dの先端技術を用いてTFCのスケールを自在に変えることで、高さ約3メートルのTFCを制作。同作は上海や韓国の釜山でも展示された。
そして日本の金工作家・石川工房五代目の石川広明とのコラボレーションが18年に行われ、フィギュアの毛髪が精巧に整えられた金に置き換えられることで、小ぶりながらも重厚な質感を持つTFCが生み出された。
現在、京都のhakuで開催されている金氏の個展「髪とプラスチックと黄金」では、TFCを構成する要素を分解し、「髪とプラスチックと黄金」を手がかりに展示作品を再構成。コラージュによる制作を続けてきた金氏の世界観に迫っていく。
また、7月10日よりhaku近くの京都髙島屋で同時開催される「大黄金展」では、新作《Teenage Fan Club(Gold and Silver)》を日本初公開。本作は、京都の旧三井家下鴨別邸での「光の現代美」展(2017)で披露された《Mellow Gold #1》とともに見ることができるので、こちらもチェックしてほしい。