「野村アートアワード」とは、現代美術の分野で挑戦を続ける芸術家を支援することを目的に、今年新たに創設されたアートアワード。同賞は、「極めて優れた実績を有し、さらなる飛躍が期待されるアーティスト1名」に大賞を授与。賞金額は、これまでの世界のアートアワードでも最高額となる100万ドル(約1億1000万円)だ。また新進気鋭のアーティスト2名に授与される「エマージング・アーティスト賞」も、それぞれ10万ドル(約1100万円)と高額な賞金が用意されている。
そしてこの度、「エマージング・アーティスト賞」の受賞者2名が発表された。受賞者は、中国出身の程然(チェン・ラン)と、アメリカ出身のキャメロン・ローランド。
程然は1981年生まれ。1980年代生まれの世代「80後(バーリンホウ)」を代表するアーティストだ。映画や、詩歌、ドラマ、小説、インスタレーションを横断した作品で知られ、オランダ国立芸術アカデミーでのレジデンシー時代に制作した9時間におよぶフィルム作品《In the Course of the Miraculous》(2015)が代表作として知られている。
いっぽうキャメロン・ローランドは1988年フィラデルフィア生まれで、現代生活を規定する法的および経済的構造をテーマにした作品で知られる。これまで、ロサンゼルス現代美術館などで個展を開催してきたほか、ホイットニー美術館(ニューヨーク)やニューヨーク近代美術館などでグループ展に参加。2020年には、インスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アーツ(イギリス)での個展を予定している。
今回、京都・東福寺での授賞式には程然のみが来日。程は受賞について「とても嬉しい。私はフィルムメーカーなので、その活動には資金が必要です。今回いただいた賞金を使って何をつくるかはまだ決まっていませんが、自分にとって重要となる作品に使えればと思います」とコメント。
「自分のどこが評価されたと思うか」という問いについては、「わかりません(笑)。ラッキーだったんだと思います」としながら、「こういった新しいアートアワードが生まれること、それもアジア・日本から生まれたことは重要です。世界からも注目を集めると思いますし、これまでとは違う世界が生まれるのだと思います」とアワードの意義について語った。
なお、今回の審査員を務めたのは、M+(エム・プラス)美術館副館長兼チーフキュレーターのドリョン・チョンをはじめ、ロバート・ラウシェンバーグ財団エグゼクティブ・ディレクターのキャシー・ハルブライヒ、東京都現代美術館参事の長谷川祐子、メトロポリタン美術館館長のマックス・ホライン、英国アーツ・カウンシルチェアマンのニコラス・セロータ、サザビーズ・ファインアート部門チェアマンのアラン・シュワルツマンら6名と、故オクウィ・エンヴェゾー。
授賞式に登壇したアラン・シュワルツマンは、審査の途中でこの世を去ったオクウィ・エンヴェゾーに対して感謝を述べつつ、本アワードについては次のように語った。「今日のアート界において、立派な作品はたくさんありますが、大胆な作品はますます少なくなっている。だからこそ、先見の明があるパトロンが必要なのです。アーティストにとってこのアワードは、クリエイティブになることへの自由を与えてくれるものなのです」。
なお大賞は今年10月に上海で開催予定のガラ・イベントにて明らかにされる。次年度以降も継続が予定されている本アワード。その行方を注視したい。