リー・ミンウェイは1964年台湾生まれのアーティスト。93年にカリフォルニア美術工芸大学を卒業後、97年にイェール大学の建築大学院を修了した。カリフォルニア美術工芸大学では、テキスタイルと同時に建築を専攻していた。現在はニューヨークとパリを拠点に活動を行っている。
学生時代建築を学ぶも、建築におけるある種の男性優位性やエゴ、正確さをあまり好まなかったと語るミンウェイ。いっぽうで織物をはじめとするテキスタイルは、まったく異なる二次元の構造感覚をミンウェイに与え、その感覚が概念的に人々を織り合わせるような作風を確立させたという。
ミンウェイはその後、テキスタイルが持つ確実性を超越するものを求めて新たにパブリックアートを学ぶことで、芸術と人生を曖昧にぼかすことや人間関係の探求、そして日常の慣習的行為にまつわる考えを自身の作品に取り入れていった。リレーショナル・アートの思考と実践を続けるミンウェイの一連の作品群は、作家本人との食事や睡眠、歩行、対話するなどの経験を通じて、人々が信頼や親密さ、自己認識についての問題を探る場をつくり出すものだ。
これまで世界各地で数々の個展を開催してきたほか、ビエンナーレなどの国際展にも参加するなど、精力的に活動するミンウェイ。日本においても、14年に森美術館で日本初個展「リー・ミンウェイとその関係展:参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」を開催。本展は同館での会期終了後、台北とオークランドを巡回した。
そんなミンウェイの個展「The Tourist」が、六本木のペロタン東京で開催される。本展のタイトルと同名の作品は、2001年にヒューストンのライス大学アートギャラリーのコミッションワークとして発表されたもの。その後、本作はニューヨーク近代美術館(2003)、シャーマン・ギャラリーズ(シドニー、2006)、シルン美術館(フランクフルト、2008、2011)でも展示された。
この《The Tourist》における「ゲームのルール」は簡単。参加者はそれぞれある一定の日に、自身が暮らす街を特徴づける場所、空間、体験をミンウェイに紹介し、街について自身が持っている知識を「贈り物」として、ミンウェイにシェアしなくてはならない。
これはその場所に深く、独自のつながりを持つ個個人が先導する街の媒介であり、ミンウェイは「ツアーガイド」の役割を持つ参加者について、「私とともに作品を作るクリエイターであり、作品の真なる所有者である」と述べている。