建築家・辰野金吾(1854~1919)の没後100年を記念し、京都文化博物館、日本銀行金融研究所貨幣博物館、そして東京ステーションギャラリーの3館で特別展が開催される。
辰野は、ヨーロッパの工業技術輸入のために政府が招いた建築技師、ジョサイア・コンドルに師事し、1879年に工部大学校(現・東京大学工学部)を主席で卒業。イギリス留学を経て、84年からは工部大学校の教授を務めるなど建築教育に専念する。そして1902年の退職後に事務所を立ち上げ、本格的に建築設計に従事した。
今回の会場となる3館はどれも重要文化財に指定され、辰野の代表作と言えるもの。なかでも1914年竣工の東京駅丸の内駅舎は、2007年から大規模改修を開始。12年に完了し、辰野建築の特色であるレンガの壁面や、レリーフをあしらったドームが復原された。
そんな東京駅・丸の内北口に位置する東京ステーションギャラリーでは、「辰野金吾と美術のはなし」を開催(11月2日~24日)。建築における美術教育の重要性を訴え、美術界とも関係が深かったという辰野。本展では美術界での足跡をテーマとし、渡欧中に受けた影響や、洋画家・松岡壽との知られざる交友関係に迫る。
また、日本銀行金融研究所貨幣博物館(日本銀行本店本館)では「辰野金吾と日本銀行 ―日本近代建築のパイオニア―」を開催(9月21日~12月8日)。1896年竣工の日本銀行本店本館を描いた当時の錦絵のほか、同館に関する写真や資料を見ることができる。
そして1906年竣工の京都文化博物館(旧・日本銀行京都支店)では「文博界隈の近代建築と地域事業」を開催(8月31日~10月27日)。辰野の事績を振り返るとともに、同館の周辺に多く立ち並ぶ近代建築と、その魅力を引き出し活用する地域事業を紹介する。
辰野建築の魅力や歴史に触れることのできる今回の企画。「辰野堅固」と呼ばれたほどの誠実さで日本の近代建築に貢献したその人の姿を、3つの展覧会でたどってみたい。