光あふれる色彩とダイナミックな構図で、ときにユーモアや社会批評を交えながら力強い絵画を手がけてきた大岩オスカール。その日本では10年ぶりとなる大規模な個展が、金沢21世紀美術館で開催される。
大岩は1965年ブラジル・サンパウロ生まれ、89年にサンパウロ大学建築都市学部卒業。その後東京やロンドンを転々とし、2002年からニューヨークを拠点に活動を行う。日本の美術館では、個展「大岩オスカール 夢みる世界」(東京都現代美術館、2008)を開催したほか、最近では「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」(渋谷区立松濤美術館、2018)に参加。
今回の個展「光をめざす旅」は、油彩と大型作品などの近作を中心とした約60点で構成。6つの章で大岩の作品を紹介し、2000年以降の歩みをたどる。
本展は、自身が暮らすニューヨークを俯瞰でとらえたシリーズや、混迷を極めるアメリカの姿をバーベキューやサーカスといったモチーフによってあぶり出す作品群からスタート。サンパウロから東京、ニューヨークと各地を転々とする「旅人生」を送ってきた大岩ならではの視点を見ることができる。
また、環境問題や自然災害といったテーマを扱った章では、作曲家のチャド・キャノンとコラボレーション。大岩の作品群にインスピレーションを受けて生み出された壮大な交響曲と、絵画の融合を試みる。
大岩の作品においてもっとも重要なテーマは「光」。本展を締めくくるのは、熱帯雨林や川をモチーフに、やわらかな光を描いた作品の数々だ。なかでも新作の《光をめざす旅》は、「幸せになりたいのだったら、自分の中で自分が目指せる光を育てていくのが大事」という大岩の姿勢をもっともよく表している。
なお大岩は本展にあわせて、同館の27メートルにおよぶ巨大な壁面に新作のドローイング《森》を制作予定。大岩が世界を旅しながら追い求めてきた「光」は、いまを生きることの複雑さの先にある希望を思い起こさせてくれることだろう。