日本最後の文人として知られる富岡鉄斎(1836~1924)。その作品世界を紹介する展覧会が、奈良の大和文華館で開催中だ。
鉄斎は幼少期から国学や漢学を学び、歌人・大田垣蓮月のもとで学僕として過ごした。幕末期には、勤王志士たちと交流し、国事に奔走。明治維新の後は宮司としての職を経て、晩年は画業に専念する。学者としての姿勢を貫きながら多彩な作品を手がけ、文人画(学問を修めた知識人が余技的に描く絵)の重鎮となった。
本展では、そんな鉄斎のコレクションを誇る大和文華館の所蔵品に、特別出陳作品を加えた51件を展示。「万巻の書を読み、万里の路を行く」という中国文人の理想を生涯を通して実践し、日本の様々な地を訪れた鉄斎の多彩な作品を紹介する。
また小特集として、奈良にゆかりのある鉄斎作品を展示。月ヶ瀬の梅を描いた《名士観梅図》、吉野の桜を描いた《華之世界図》などを通して、文人墨客に愛された奈良の名勝を鉄斎の目線から見ることができる。そのほかにも、鉄斎の豊かな交友関係のなかで生まれた《扇面新居雅会図》などが展示される。