奈良国立博物館で、大阪・藤田美術館が所蔵するコレクションから国宝9件、重要文化財50件あまりを紹介する展覧会「国宝の殿堂 藤田美術館展-曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき-」 が開催されている。
藤田美術館は、明治初期から大正にかけて活躍した実業家・藤田傳三郎と、2人の息子によって収集された名品を公開するため1954年に開館。2000件にのぼるコレクションは、水墨画や絵巻、能装束、仏像、仏教工芸、考古資料など多岐にわたる。本展ではその多彩なコレクションの全貌に迫りつつ、館外初公開を含む奈良ゆかりの仏教美術も紹介する。
一番の見どころは、世界に3椀しか現存しないと言われる国宝《曜変天目茶碗》。曜変天目とは、12〜13世紀に中国でつくられた天目茶碗のうち、偶然に美しい光彩が生じたもののこと。宇宙に浮かぶ星のような輝きが現れる理由はいまだ解明されておらず、再現は不可能とされている。
また、平安文学の名作『紫式部日記』を絵画化した国宝《紫式部日記絵詞》や、西遊記の三蔵法師のモデルになった唐代の高僧・玄奘三蔵の生涯を描いた絵巻で、鮮やかな色彩や人物、景観の描写に優れた鎌倉時代を代表する国宝《玄奘三蔵絵》も見ることができる。
そのほかにも水墨画、仏画、書跡、古筆に加え、良好な保存状態で平安時代の蒔絵を見ることができる国宝《仏功徳蒔絵経箱》や、薬師寺に伝来し、蒔絵の初期の作例として貴重な国宝《花蝶蒔絵挾軾》も展示。
そして館外初公開となるのが、《仏像彩画円柱》だ。同作は全長3メートルで8本存在し、仏堂内陣の柱ではないかとされるもの。創作当時の彩色が残っている点で、とても貴重と言える。また、快慶晩年の重要文化財《地蔵菩薩立像》も登場し、極彩色の仏教美術を心ゆくまで楽しむことができる。
なお《曜変天目茶碗》は、3椀がこの春同時期に公開。本展のほか、滋賀のMIHO MUSEUMで開催の「大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋(はそうあい)」、東京・世田谷の静嘉堂文庫美術館で開催の「日本刀の華 備前刀」でそのきらめきを見ることができる。