その開創以来、400年にわたって大切に守られてきた京都・大徳寺龍光院の国宝や重要文化財を一挙公開する展覧会が、滋賀のMIHO MUSEUMで開催される。
龍寶山(りゅうほうざん)大徳寺は、嘉暦元年(1326)に開かれた臨済禅の大本山。その塔頭のひとつである龍光院は、黒田長政が父・黒田孝高(如水、官兵衛)の菩提を弔うため、龍光院二世の江月宗玩を実質的な開祖として慶長11年(1606)に建立された。当時から高松宮好仁親王、小堀遠州、松花堂昭乗など一流の文化人が集う寛永文化の発信地であり、その後400年を経てもなお、開祖の教えをいまに伝えている。
本展では《曜変天目》のほか、中国・南宋時代の禅僧である密庵咸傑(みったん・かんけつ)や、元から来日した高僧の竺仙梵僊(じんせん・ぼくせん)による墨蹟といった国宝を展示。また、重要文化財である《柿栗図》(伝牧谿筆)、《山水図》(伝馬遠筆)、《油滴天目》なども登場する。
これらを戦火や天災から守り抜いたのは、大坂・堺の豪商である天王寺屋の次男として生まれた江月宗玩(こうげつ・そうがん)。本展では上記のほかにも、天王寺屋伝来の茶道具、寛永文化の美を伝える江月所用の品や江月に帰依したゆかりの人々の文物、歴代寺伝の什物などが初めて一挙に公開される。
展覧会タイトルの「破草鞋」とは、破れた草鞋(わらじ)を表す言葉。転じて、自らが学んだ法や修めた道をちらつかせることなく、人知れず平凡に、ひとつの破れたわらじのように生きていくことこそが禅の修行の境地である、という意味を持つ。
いまに至るまで、禅の教えと共にその至宝を守り抜いてきた大徳寺龍光院。これまで一般の拝観を受け付けず、ほとんど目に触れることのなかった名品の数々を、この機会にじっくりと楽しみたい。