バールティ・ケールが見せる「精霊、モノ、場所」の交差点。ペロタン東京で開催中の日本初個展をチェック

インド拠点のアーティスト、バールティ・ケールの日本初個展「Djinns, things, places」(精霊、モノ、場所)が、六本木のペロタン東京で開催されている。ケールは本展を通して、インドにおいて恐れられると同時に称賛され、しばし見過ごされがちな独特の「神性」についてより一層深く掘り下げる。会期は12月15日まで。

Installation view Photo by Kei Okano

 バールティ・ケールは1969 年ロンドン生まれのアーティスト。87年から88年にかけて、ミドルセックス・ポリテクニックで学んだのち、91年までニューカッスル・ポリテクニックのファウンデーション・コースにてファインアートと絵画における学士号を取得した。現在は、インド・ニューデリーに在住、活動を行っている。

 近年はスイス、カナダ、アメリカ、ドイツ、中国などの美術館やギャラリーで個展を開催するほか、美術館やギャラリーでのグループ展にも出展してきたケール。20年以上にわたって築かれた、絵画、彫刻、レディ・メイド、インスタレーションといった多彩な作品群は、いずれもシュルレアリスムや物語性、そして物事の本質との揺るぎない結びつきを見せるものだ。その作品は大英博物館、テート・モダン、ノースカロライナ美術館、グッゲンハイム・アブ・ダビなどに収蔵されている。

Installation view Photo by Kei Okano

 神聖な庇護の魔獣と、決して立ち去ることのない魂の師が宿るとされるインドを拠点とするケール。現在、六本木のペロタン東京で開催中の日本初個展「Djinns, things, places」(精霊、モノ、場所)では、インドにおいて恐れられると同時に称賛され、しばし見過ごされがちな独特の「神性」についてより一層深く掘り下げている。

 ケールは本展を通して、自身の作品と共鳴するシンボル「ビンディ」と鏡の取り合わせといったモチーフについて説き、ひいては「修復」という概念へと高めることを試みる。その作品制作は、独自の叙情性からしばしば「拒否行為」とも評されるが、物語に生きるということがその物語を自己流の雑種性の一部となるように、ケールにとって破壊行為は「改修」と同等の意味を持つものだという。

 本展では、ペロタン東京の「砕かれた」ウィンドウ・ファサードに対する空間的応答として、ケールはこれまでの飾りたてた額装とは異なる、簡素で滑らかなエッジを持った鏡の作品《Algorithm for Refusal》を配置。ケールは、鏡を「固有の欺瞞」の道具として解釈したギリシャ人を鑑みて、鏡を割る行為によって、鏡が主張する自我の観念を砕くと同時に、「金継ぎ」の国である日本において、破砕から結果的に生じる物語に多彩性がある限り、そこに美があるということを再び示す。

 加えて、「ちぐはぐ」な彫刻《The intermediaries》も見ることができる。同作では、組み合わされた形状やそれぞれの正体、いずれの異神話から借用されたのかについて言及されず、特定性が回避されている。それは型にはまらない「寄せ集め」であること、祖先の複雑さ、ディスポラ的アイデンティティ、すなわち家族生活を示唆し、地理的および心理社会的な不協和音をもたらす。融合によって生み出される新たなビジュアルを楽しみたい。

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