ギムホンソックは1964年生まれ。ソウル大学校にて彫刻を学んだのち、ドイツのデュッセルドルフ美術アカデミー大学院に進学。現在は韓国・ソウルを拠点に活動を行っており、韓国の現代美術を牽引するアーティストとして知られる。
これまでに数多くの個展を開催してきたほか、光州、リヨン、イスタンブール、台北、ヴェネチアなど著名な国際展を含む世界各国のグループ展にも参加してきたギムホンソック。12年にはKorea Artist Prizeを受賞するなど、高い評価を得ている。
「コンセプチュアル・アート」を貫くギムホンソックの実践は、おもに日常的な形状に抽象的な意味合いを吹き込み、変わりゆく経済や文化の系譜においてアートがどのように存在できるのかを探求するもの。その探求は、映像、パフォーマンス、インスタレーション、ペインティング、スカルプチャーといった多種多様な表現手段によって表現される。
今回、六本木のペロタン東京で開催される個展「EVERY, DAY, ACTS, LIKE, LIFE」(=不適切)では、展覧会タイトルと同名の「不適切」シリーズより、複数のツイスト・バルーンが互いに寄りかかった形状を鋳造したブロンズ製の彫刻を中心に紹介。新作を含む全7作品にギムソンホック芸術の源泉を見ることができる。
同作はツイスト・バルーンの「風船で動物をつくる」というような典型的な使用法とは対照的に、ツイストされることなく、黒色に塗られ、それぞれが傾斜したりほぼ放物線を描きながら、無秩序に互いに寄りかかる様子をかたどった作品だ。
その質感における比較対象として並列された形状と素材は、アルマイト(=アルミニウムの陽極酸化処理)による艷やかな色調を纏った犬型バルーンの彫刻作品への風刺であり、ギムホンソック作品に通ずる「欺瞞とユーモア」が見受けられる。ギムホンソックは、このような容易に理解できる視覚的ヒントを作品に構成することによって、他のコンテンポラリー・アートへの批評的な観察を示している。
本展には、同作に加えて、ペイントローラーとアクリル絵具を用いて「完成形のアート作品」という伝統的な定義に挑んだ壁画、金色の顔料で被覆した油彩画、鋳造された樹脂製の彫刻がならぶ。
どのような特質が良いアート作品をつくるのか、そして社会的態度や文化的作法がアートの意味や解釈にどう影響するのかを問うてきたギムホンソック。先鋭的な批評精神で展開される本展に、深い洞察を得たい。