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2018.7.12

スーパーリアリズム+抽象画の神秘的な世界。ピーター・ヴェルメッシュの日本初個展をレポート

絵画作品をとおして2次元と3次元、無形と有形、時間と空間といった境界を曖昧にするベルギー人アーティスト、ピーター・ヴェルメッシュ。ヴェルメッシュにとって日本初となる個展が六本木のペロタン東京でスタートした。会期は7月11日〜9月12日。

ペロタン東京でのピーター・ヴェルメッシュ
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 ベルギー人アーティスト、ピーター・ヴェルメッシュの日本初個展が、7月11日より六本木のペロタン東京でスタートした。会場でまず目に入るのは、硬質な大理石と領土を分かつかのように、抽象的なイメージが描かれた絵画作品だ。

 本展ではこの「Untitled」シリーズをはじめ、11点の作品が出品されている。

Untitled 2018

 「大理石と抽象的なイメージを掛け合わせることにはふたつの理由があります。まずは、物質性の象徴である大理石にペイントをすることでその物質性をかき消し、儚さや有限性を示すこと。そして、正反対でありながらも時間・空間という共通点を持つ大理石と絵画の世界を結合させることで、両者の対話空間をつくり出すことです」。大理石と油絵具からなる作品シリーズについて、ヴェルメッシュはそう話す。

展示風景

 本展は、こうした大理石と油絵具からなる作品を含む3部で構成される。大理石のシリーズに続く2つめのパートは、銅の写真をもとにした絵画作品。一見すると、薄いレイヤーを思わせる筆致が印象的な抽象画だが、この抽象画のイメージは、銅を撮影した写真がイメージソースだという。

 ヴェルメッシュはこのように、抽象的なイメージを写真で撮影し、そのイメージを再現するようにスーパーリアリスティックな絵画を描く。抽象的なイメージを緻密に描くという手段において、「自分は抽象画家でも具象画家でもありません。”象徴”を描いているのだと思います」とヴェルメッシュは明言する。

黄色くペインティングされたギャラリーのウィンドウ

 また、本展の大きな特徴は、ギャラリーの一部ウィンドウを黄色くペイントした絵画的なインスタレーション作品だ。2001年から取り組む「ワーク・イン・プログレス」シリーズの一環となる本作は、「抽象画の自主性を取り除くこと」を意図しているという。室内を黄色く彩りながら、外と中を隔てる皮膜のような役割を担う本作は、建築における垂直性の概念も強く意識されている作品だ。

 「全体を通して言えることは、私はメタフィジカル(形而上学的)なものをペインティングしているということ。不可視なものを目に見えるものにしたいのです」。そう話す作家の神秘的でコンセプチュアルな絵画世界をとおして、私たちを取り巻く時間・空間に思いを馳せてはいかがだろうか。