CAFAA賞を受賞し、ブルックリンでの滞在研究を経て得たこと。髙橋銑(アーティスト)×斯波雅子(BEAF主催)対談

CAFAA賞2023グランプリに選ばれ、アメリカNYのブルックリンで滞在研究を行った髙橋銑。現地でホストを務めた非営利団体「ブルックリン実験アート財団」(BEAF)主催者で、CAFAA賞2023の審査員を務めた斯波雅子とアーティストの髙橋に話を聞いた。

文・ポートレイト撮影=中島良平

斯波雅子(左)と髙橋銑

 公益財団法人 現代芸術振興財団(CAF)は、展覧会事業や表彰事業を通して現代アートの普及に寄与している。次なる世代の柱となる才能あるアーティストを選出し、国際的に活躍するきっかけを提供することをミッションに、CAFAA賞(CAF・アーティスト・アワード)が2015年に創設された。応募対象となるのは、美術大学などの教育機関を卒業して5年から10年程度のアーティスト。CAFAA賞の受賞特典は、賞金300万円に加え、3ヶ月にわたりニューヨーク・ブルックリンで滞在研究/制作ができることだ。

 CAFAA賞2023グランプリに選ばれたのは、近現代彫刻の保存修復に携わり、その視点を反映させながらアーティストとして自身の作品制作を続ける髙橋銑(せん)。同賞の審査員を東京オペラシティ アートギャラリーシニア・キュレーターの野村しのぶ、インディペンデント・キュレーターの吉竹美香とともに務め、髙橋のブルックリン滞在でホストとなった非営利団体「ブルックリン実験アート財団」(BEAF)の主催者でもある斯波雅子とアーティストのふたりに話を聞いた。

CAFAA賞の選考

──まずCAFAA賞の概要を理解するために、斯波さんはどのように作家を選ばれたのか、選考基準を聞かせていただけますか。 

斯波雅子(以下、斯波) 今回の公募は、教育機関を卒業して5から10年以内で、いまサポートをすることで今後どう活動を展開していくのか、分岐点に立っているような作家が対象です。私が今年、アーティストのケビン・ハイスナーと共同で立ち上げたBEAFのミッションは、文化交流を通したアートの発展と、日本の新進アーティストの活動の展開の一助となることなので、CAFさんにはとても共感を覚えています。そうしたミッションを念頭に置くと、ありとあらゆる体験に対してオープンに受け入れられ、探究心があって、そこでしか出会えないものに対して関心を向け、自分が変化することを楽しめることが作家として大事なのではないかと考えました。

斯波雅子(右)

 また、レジデンシーのホストとして受け入れる側としても、ブルックリンのコミュニティに影響を与えられるようなユニークさを持っているような作家を想定しました。野村しのぶさんと吉竹美香さんと一緒に審査を行い、どういった方が一番サポートを受けて飛躍的な展開をするかと考えたときに、物事に対してとても真摯に対峙し、コンセプチュアルでユニークな活動をしている髙橋さんがいいのではないかと意見がまとまりました。

──髙橋さんは応募にあたり、ご自身のどのような点をアピールしたのでしょうか。 

髙橋銑(以下、髙橋) 初めはとにかく、美術作品の保存修復をバックグラウンドに作品を制作しているアーティストは、世界的に見てもユニークな存在なんだということを伝えようと思って面接に臨みました。若干肩に力が入っていたのかもしれません。しかし、実際に会場に来たら審査員の3名がすごくリラックスした空気で迎えてくださったので、来る前に考えていたことはもちろん話しましたが、肩の力も抜けて、これまでにつくった作品や自分が考えていることなどについて自由に話すことができました。

髙橋銑

斯波 もしかしたら、そこが決め手だったのかもしれません。自分はこうしなければいけない、というふうに決めてきている人だと、行った先で新しいものや考えと出会ったとしても、自分を変化させることができませんよね。多分面接の場で話をしながら、そういうことが伝わったのではないかと思います。

編集部

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