ランスの地下空間と、移動する《ネスト》の始まり
──今回、最初にルイナールのメゾンやブドウ畑を訪れたときは、どのような印象を持たれましたか?
川俣正(以下、川俣) 最初に現地を見たのは、去年の3月くらいでした。ブドウ畑に連れて行ってもらったとき、すごくコントロールされていて綺麗だな、というのが第一印象です。最近は気候変動の影響もあるから、毎年少しずつ調整しながら味をつくっているという話を聞いて、非常に真面目な生産者だなと感じました。
そこから具体的に何をつくろうかという話になり、敷地内だけではなく、彼らが世界各地で展開しているアートフェアのブースでも現地制作を行うという、全体のスケジュールが決まっていきました。

──プロジェクトの皮切りとなったパリの「パレ・ド・トーキョー」での展示から、すでに今回の敷地への展開を見据えていたそうですね。
川俣 もともとパリで最初につくった作品を9月に取り壊して、このランスのメゾンに移動させて設置する計画だったのです。ものが移動していくプロセス自体を作品にしようと考えていた。だけど、パリでの展示の評判が良くて「9月まで置いておいてくれ」と現地から要請されてしまって(笑)。だから今回はランスで地元の材料を使い、新作としてつくることになりました。
──今回のプログラムのテーマは「Conversations with Nature(自然との対話)」です。この言葉に対して、川俣さんご自身はどのようなスタンスで臨まれたのでしょうか。
川俣 メゾン側が僕の作品に「自然への敬意」や「つながり」を見出してオーダーしてくれた理由はよくわかります。ただ、僕自身はそこまで「自然」というものを意識して、それに対峙するようなかたちでやっているわけではないんです。「自然と共に」というよりは、もうすでに自然は自分たちの生活や環境の「中に入ってきている」という感覚が近い。 それよりも、僕が強く興味を持っているのは「偶然性」や「アクシデンタルなもの」なのです。あらかじめ計算し尽くしてつくるよりも、現場で起きる予測不可能な要素が入ってきたほうが、僕としては面白い。じつは学生の頃から、自然災害や地震、戦争、事故などの写真を何百枚もスクラップして集めていて、たくさん持っています。その結果として偶然にできてしまった「形状や状態」が、僕の作品の大きなリファレンスになっているのは確かですね。





























