INSIGHT / PROMOTION - 2018.4.24

「リウ・ボーリン × ルイナール」
“見えない男”が出会った、シャンパーニュの時間

世界最古のシャンパーニュ・メゾン「ルイナール」が、今年のアーティスト・コラボレーションでタッグを組んだのは、「見えない男」のシリーズで、中国から世界へと評価を高めているリウ・ボーリン。シャンパーニュ・メゾンの現場に溶け込むことで、辿り着いた「ルイナール」の真価とは。

リウ・ボーリン Hiding in the Blanc de Blancs crayère 2018

リウ・ボーリン Hiding in the Blanc de Blancs crayère 2018

相思相愛のコラボレーション

 1729年の創業以来、ルイナールはアートと特別な関係を切り結んできたシャンパーニュである。1896年に、チェコの画家・アルフォンス・ミュシャにポスターの制作を依頼。ミュシャにとって初めての広告制作となったこのポスターは、パリの街中に掲示されただけでなく、アルプスの最高峰モンブランの山頂にも展示されるなど、当時大きな反響を呼んだ。以来、ルイナールとアートの蜜月は続いている。

 現在は、毎年世界中の大きなアートフェアのスポンサーを務めるなど、コンテンポラリー・アートとの関わりも深い。なかでも、大きな取り組みといえるのが、毎年一人のアーティストを招聘して、コラボレーションを行うプロジェクトだ。2000年から始まり、これまでアーウィン・オラフ、ジャウメ・プレンサなどが作品を発表してきた。今回、このプロジェクトに選ばれたのが、中国のアーティスト、リウ・ボーリンだ。

リウ・ボーリン Hiding in the vineyards with the Ruinart Cellar Master 2018

 リウ・ボーリンは、2005年、オリンピックを目前に近代都市へと変貌を遂げていく北京を舞台に、取り壊された旧家屋を前に背景と同化するペインティングを自身に施して溶け込ませるシリーズ「Hiding in the City」を開始する。さらに中国共産党のスローガンの前に立った作品や四川大地震で崩壊した建物にカモフラージュした作品といった政治・社会的な関心に基づいたシリーズから、スーパーマーケットの陳列棚の作品など資本主義・消費社会へとそのテーマを移してきた。そして近年は、資産や資源、エコロジーなどに関心が向かっている。今回のルイナールとのコラボレーションもその展開として考えられるだろう。

 2017年8月にランスにあるメゾンに滞在したリウ・ボーリンは、ルイナールがつくられていく現場を2日間かけてめぐった。「私は、ルイナールの匠の技や土地の天然資源がシャンパーニュの醸造に見事に結実されている現場を目にして、深い感銘を受けました。そこでは、ブドウ畑から、湿度も温度もシャンパーニュの醸造に最適化されるように管理された白亜質のセラー(ガリアローマ時代の石切り場跡)まで、自然に悪影響を与えることなく、自然の恵みを最大限に引き出していました。彼らのそんな姿を見て、その仕事へのリスペクトを表現したいと思いました」。

《Lost in blanc de blancs》制作の様子

 そうして昨年10月に10日間ほど滞在して制作された8つの作品。特筆すべき点のひとつは、リウ・ボーリンだけでなくルイナールの従業員も風景の中に収まっていること。もうひとつは、普段公開されることない製造の現場が作品の舞台に選ばれていること。ここにお互いの相思相愛の関係があらわれている。

 自身もブドウ畑の作品にモデルとして登場した最高醸造責任者のフレデリック・パナイオティスは、「制作のプロセスは、場所を決めてからペインティングをして、写真を撮って、一緒にチェックして、すべてとても興味深くて面白かった! そこでの彼は、演奏者が一体となって演奏できるように導く指揮者のような存在です。私たちルイナールもブドウの栽培農家から、ブドウをワインに変える人、ブレンドされたワインのテイスティングをする人まで全員が一体となって働いています。ただ、私たちは職人で、彼はアーティストです。それでもお互いに目的とするものをつくり上げていくプロセスには、共通するものがあると実感できました」と語る。

 また、澱抜きとラベリングの工場での撮影に参加したスタッフたちは、その様子を「ペイントが進んでいくと、私たちを見守ってくれている人たちの目を通して、自分が徐々に背景の中に消えていっていることがわかるのです」「彼が心から気遣ってくれたのが嬉しかったです。彼は私を抽象的にペイントしましたが、やがてそれがすべて意味のあることだとわかっていったのです」と語っている。

 いっぽう、リウ・ボーリンはルイナールスタッフとの制作について、「10年、20年のキャリアのある熟練労働者といった人ばかりで、自分の仕事に対して本当にプライドを持っていて、みなさんの生命というか日常が深く仕事と結びついていることを感じました。自分たちがつくっているものと一体となっていく人間の姿をここで表現したいと思いました」と、ときには一つの作品の撮影が2日間にもおよぶ長時間の制作を支えた彼らへの気持ちを語ってくれた。

時間とスピリットが内包されたものたち

 リウ・ボーリンは、今日、写真を用 いた自身のアート作品の役割について、こう語っている。「私はふと考えるんです。紙やペンがない時代に、精神についての議論はどう行っていたのか。例えば、石ころしかなければ、身の回りに転がっている材料で魂の話をしていたんじゃないか。美術館は先人たちが芸術の精神について、どのように語り合っていたのか、その想像力を働かせられる場所だと思います。そして、科学技術が進んで誰もが携帯電話を持つようになった現代では、私たちは精神について話し合う際には写真で記録しています。写真で残して伝えていくことで、私たちがアートのスピリットについて話し合ったことを想起させるのです」。 ルイナールとのプロジェクトは、 世界最古のシャンパーニュの300年にわたる歴史、受け継がれてきた価値観が染み込んだ場所に、現代に生きるアーティストが溶け込むことでその精神を際立たせるという、リウ・ボーリンのアートの真髄を感じさせるものとなっていた。

 このコラボレーションは「KYOTOGRAPHIE」のプログラムとして、日本初公開となる。最後に、展覧会のために初来日した彼に、京都と「KYOTOGRAPHIE」の印象について聞いた。

 「初めての日本が京都だったことは本当に恵まれていると思います。京都の建築、とくに庭がすごく印象的でした。花が咲いて、和服を身にまとっている恋人たちの姿をみて、自分がまるで映画のワンシーンにいるような感覚。中国と日本は古くから深い関わりがありますが、自分がまるで中国の唐の時代に戻ったような気がして、非常にぬくもりを感じました。

 KYOTOGRAPHIEは、先ほど見て回って大きなインパクトを受けました。多くの国籍の違うアーティストの展示を見て、それぞれ芸術的な方向性も様々で、アートに対するスピリットを感じました。今後、芸術を通して視野を広げて、世界を学んでいくための支えになるだろうと思います」。

 様々な歴史と文化が交差する「KYOTOGRAPHIE」では、きっと誰にとっても新しい世界と出会うチャンスが広がっている。