名画を「レゴ化」するとき、何を残すべきか
──完成済みのアートポスターや複製画を購入するのと比べて、「自分で組み立てる」プロセスには、どのような付加価値があると考えていますか。
グローブス 最大の違いは、「組み立て体験そのもの」です。レゴ®アートは作品世界へ没入し、意識的にアートと向き合う体験を提供します。例えば「葛飾北斎〈神奈川沖浪裏〉」や「クロード・モネ〈睡蓮の池に架かる橋〉」のセットでは、専用サウンドトラックや制作背景の解説コンテンツも用意されています。その結果、作品に対してより深く世界観に入り込めるように設計されています。
こうした体験を通じ、完成した作品への感情的なつながりがより強くなり、単なるインテリアとしてだけでなく、自分にとって特別な思い出の一部として残っていく。それがレゴ®アートの目指している価値です。
──おっしゃるように、限定サウンドトラックを含めて細部へのこだわりは印象的です。高価格帯の商品として、どのような品質管理やデザイン基準を設けていますか。
グローブス 私たちにとってプレミアム品質とは、完成したモデルだけを指すものではありません。箱を開けた瞬間から、完成後に自宅へ飾るまで、その体験全体を意味しています。レゴ®アートを手に取ったとき、お客さまはその随所に、私たちのこだわりや職人性、、作品細部へのこだわりを感じてほしいと考えています。
デザイン工程は非常に厳格かつ協働的です。レゴ®アートのセットは、デザイナー、グラフィックデザイナー、モデルビルダー、エンジニア、組み立て説明書の専門家、品質管理チーム、消費者テスターなど、多くのプロフェッショナルの手を経て完成します。


開発過程では、モデルを何度も組み立て直し、改善を重ねながら、「直感的で満足感があり、一貫して高品質な組み立て体験」を追求しています。私たちは、構造的安定性や色の再現性だけでなく、組み立てのテンポ、反復性、視覚的インパクト、そして組み立て体験そのものが持つ 「感情的なリズム」に至るまで細かく検証しています。
また、ディスプレイ時の見え方も非常に重視しています。実際の居住空間に置かれたときにどのように見えるか、光をどのように受けるか、フレームや奥行きをどのように扱うか、そしてオリジナル作品の持つ本質をどこまでレゴ®ブロックで表現できるかを検討しています。
いまは多くの商業製品が自動化されていますが、すべてのレゴ®セットは、情熱を持つデザイナーたちの「手作業によるクリエイティブな発想」から始まっています。彼らの使命はただひとつ、インスピレーションがあり、没入感があり、そして「作る価値がある」と心から感じられる体験を生み出すことです。この「人間らしさ」は、とくに感情的・美的期待値の高いレゴ®アートにおいて非常に重要だと考えています。

──アートを扱う製品開発では、美術館や権利元との協働において何を重視していますか。また、キュレーターなど専門家とはどのようなコミュニケーションを取っていますか。
グローブス レゴ®アートを美術館や権利元と共同開発する際には、キュレーターや専門家との密接な対話が不可欠です。私たちの目的は、たんにアート作品をレゴ®ブロックで再現することではありません。オリジナル作品が持つ精神性や物語性、感情的本質を、レゴ®ブロックで忠実に再解釈することです。そのため、開発段階では可能な限り専門家と連携し、作品の視覚的特徴だけでなく、アーティストの意図や歴史的背景、色彩や質感、どのディテールを優先して守るべきかについて理解を深めています。これらの対話は、構図やフレーミング、色彩処理、組み立て技法などのクリエイティブな判断を導くうえで非常に重要です。そして何より、「表面的な複製」に終わらないためにも欠かせません。私たちは、オリジナル作品への敬意を保ちながらも、レゴ®ブロックならではの創造的可能性を最大限に活かした解釈を目指しています。



















