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宮本華子インタビュー。「相容れない他者」と向きあうために作品をつくり続ける

「VOCA展2025」の大賞を受賞した、アーティストの宮本華子。「家」や「家族」「他者」とのコミュニケーションをテーマに作品を制作を行い、今回《在る家の日常》が受賞作品となった。制作活動に加えて熊本でのレジデンスの運営も行う宮本が目指すものとは何か。この作品の制作経緯を通じて、話を聞いた。

聞き手・構成=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部) 撮影=手塚なつめ

宮本華子

「どこにでもある家の日常」を「家」をつくることで表現

──VOCA賞の受賞おめでとうございます。今回の受賞作品《在る家の日常》は、画面がいくつかの家で構成されているようです。はじめに、この作品について教えていただけますか。

宮本華子(以下、宮本) ありがとうございます。私は15歳の頃に実家を出て祖父母と暮らしていたのですが、ここ3年のあいだに立て続けに祖父母が亡くなってしまって。最期を家で看取ることになりました。両親よりも長い時間をともにしたふたりが衰弱していく姿を見るのは、私にとってとてもつらかったのですが、同時にとても美しくも感じられました。この《在る家の日常》は、そんなどこにでもある家の日常を「家」をつくることでかたちにした作品です。

 以前より「家」「家族」「他者」といったテーマで制作をしてきましたが、祖父母の死は私にとって「家のような存在」が無くなることでもありました。この「私にとってのどうしようもない出来事」を作品化せずにはいられなかったんです。

宮本華子 在る家の日常 2025 提供=VOCA展2025 広報事務局

──この作品はそれぞれの家のなかに映像が組み込まれており、日常的な風景や家族の様子が映し出されています。映像のなかには、宮本さんが一緒に暮らしてきたお祖父さまやお祖母さまとのやりとりが反映されているのでしょうか?

 はい。ふたりとも映像に登場しています。例えば、祖母は自宅で訪問入浴の介護サービスを受けていたので、その様子も映し出されています。制作を通じて「どこにでもある日常」というものの愛おしさを実感するとともに、様々な人たちの手を借りながら紡がれていくものなのだということを、あらためて見つめる機会にもなりましたね。

宮本華子 在る家の日常 部分 2025
宮本華子 在る家の日常 部分 2025

編集部

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