縮小の先に見えてきた新しいエコシステム
近年、市場上位層と下位市場の動向を比較すると、「規模が大きいほど安定している」という、これまでのアートマーケットの前提そのものが揺らぎ始めていることがわかる。
世界的な不確実性が高まる現在、むしろもっとも改善が見られているのは市場の下位層である。2025年にはギャラリーの閉廊が相次いだものの、新規開廊数はそれを上回った。また、価格帯別のデータを見ても、市場が拡大していた2022年には1000万ドルを超える高額作品の売上がもっとも大きく成長したいっぽう、市場環境が変化した23年以降は25万ドル未満の作品が堅調に推移している。反対に、高額作品市場の回復は限定的にとどまり、「大きな市場ほど強い」という構図は揺らぎ始めている。
市場が成長を続けていた時代には、最上位セクターがもっとも大きく拡大した。コレクターは最高価格帯の作品に積極的に資金を投じ、現代アートは投機的な投資対象として扱われた。その需要を背景に、多くのギャラリーは事業規模を拡大してきた。しかし今日は、金融市場の不安定化と世界情勢の混迷を受け、コレクターの支出行動も劇的に変化している。支出はより慎重になり、コレクターの関心は安定したカテゴリーへと移っている。その結果、もっとも大きな負担を背負う中堅・大手ギャラリーは、事業モデルの見直しを迫られる状況となっている。
しかし、この変化は市場の後退ではない。むしろ、拡大を前提としてきた従来の成長モデルを見直す契機ともなりうる。市場の外側では、より小規模で、コミュニティに根ざした新たな実践が生まれ始めている。その可能性について、次稿ではロサンゼルスの事例から考えてみたい。



















