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アートをめぐる現代の諸相を探る。8月号新着ブックリスト(1)

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2018年8月号では、現代アートのありかたを論じた書籍やアートマネージメントについての書籍などを取り上げた。ウェブでは3冊ずつ、2回にわけて紹介する。

評=中島水緒(美術批評)+近藤亮介(美術家)

左から『芸術と労働』『メディア・アート原論 あなたは、いったい何を探し求めているのか?』『現代アートとは何か』

『芸術と労働』

アーティストとして活動しながら生計を立てること。あるいはアートに関わる仕事で安定した収入を得ること。資本主義の現代社会においては芸術もまた労働から自由ではない。では、真っ向から取り上げられることが少ないこの手のテーマを理論と実践の両面から扱うことは可能か。批評家、作家、研究者らが実体験の報告を交えながら労働と芸術をめぐる問題に切り込む。アートマネージメントの労働環境、ボランティアの搾取問題など、シビアな状況に関する論考が多様な立場から提出された。(中島)

『芸術と労働』
白川昌生+杉田敦=編
水声社 3000円+税

『メディア・アート原論 あなたは、いったい何を探し求めているのか?』

メディア・アートとは何か。一口に言えばそれはテクノロジーを駆使した美術作品の総称だが、様々な映像装置やコンピュータが活用されるいまもメディア・アートは明確な定義を得ていない。かかる状況を前提に、アーティスト・研究者の久保田晃弘とICC学芸員の畠中実が、2008年以前/以後のメディア・アートを再考する。古い芸術観を模倣するのでなく、メディア・アートで新しい芸術観を生み出すことははたして可能なのか。歴史・現在・未来を展望する刺激的な対談集。(中島)

『メディア・アート原論 あなたは、いったい何を探し求めているのか?』
久保田晃弘+畠中実=編
フィルムアート社 1700円+税

『現代アートとは何か』

2000年代にバイリンガル美術雑誌『ART iT』を創刊、アジアの現代美術を紹介してきた著者による、新感覚の美術評論。億万長者のコレクター、悪名高いディーラー、迎合主義の美術館といった、アートワールドを牛耳る者たちの「ゴシップ」を紹介するいっぽう、ボリス・グロイスやロザリンド・クラウスら重鎮の「セオリー」を概観し、実作品も見ながら、現代美術の3要素とアーティストの7つの動機を提示する。欧米中心のアートワールドの内幕に切り込みつつ、現代美術の根拠にまで議論を展開する腕前は見事。(近藤)

『現代アートとは何か』
小崎哲哉=著
河出書房新社 2700円+税

『美術手帖』2018年8月号「BOOK」より)

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