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キュレーション論からジェンダー論、キャラクター表現論まで。6月号新着ブックリスト(1)

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2018年6月号では、ジェンダー的な視点から表現を問う書籍やキュレーターの自伝的芸術論などを取り上げた。ウェブでは3冊ずつ、2回にわけて紹介する。

文=近藤亮介+中島水緒

左から『キュレーションの方法 オブリストは語る』『〈妊婦〉アート論』『ヘンリー・フューズリの画法 物語とキャラクター表現の革新』

『キュレーションの方法 オブリストは語る』

現代美術界を代表するキュレーターの自伝的芸術論。「陸の孤島」スイスに生まれてから、サーペンタイン・ギャラリー共同ディレクターとして世界を飛び回る現在までの半生と独自の芸術観が、ボエッティ、フィッシュリ&ヴァイス、リヒターら様々なアーティストとの逸話を通して語られる。キュレーションとは「交差点をつくりだし、異なる複数の要素が触れ合うようにすること」と述べるように、古今東西の人物・思想・芸術を次々と接続していく該博ぶりに圧倒される。(近藤)

『キュレーションの方法 オブリストは語る』
ハンス・ウルリッヒ・オブリスト=著
河出書房新社|2700円+税

『〈妊婦〉アート論』

ラブドールの妊娠を撮影する美術家・菅実花のアートプロジェクト「ラブドールは胎児の夢を見るか?」(2014-)に触発された研究者たちが、美術史やジェンダーなどの観点から妊娠表象について議論する論集。女性作家が描写してきた妊娠、妊娠した女児用人形(ファッションドール)、近年日本でも注目を集めるマタニティ・フォトといった表象の分析を通じて、長らく「女性」「美」「アート」を支配してきた男性主体の家父長制を暴き、社会規範にとらわれない妊娠経験・表象のあり方を考察する。(近藤)

『〈妊婦〉アート論』
山崎明子+藤木直実=編著
青弓社|2400円+税

『ヘンリー・フューズリの画法 物語とキャラクター表現の革新』

ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの正統な継承者として18~19世紀に活躍したヘンリー・フューズリ。日本で知名度がさほど高くないこの画家が物語絵画を数多く手がけていたことから、物語の登場人物=キャラクターの身体がいかに設計されてきたかを分析する。また、同時代の演劇効果がどのように絵画内に引用されているかも検証。フューズリの様式が美術の興業化に対応しているという推察や、現代のキャラクター論、アニメーション文化にも連なる観点が斬新だ。(中島)

『ヘンリー・フューズリの画法 物語とキャラクター表現の革新』
松下哲也=著
三元社|3200円+税

『美術手帖』2018年6月号「BOOK」より)

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