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芸術運動を様々な視点からとらえる。4・5月号新着ブックリスト

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2018年4・5月号では、バウハウスや近代日本画史に新たな視座を提示する書籍など4冊を紹介した。

文=近藤亮介+中島水緒

右から『バウハウスとはなにか』『岡上淑子全作品』『ストローブ=ユイレ―シネマの絶対に向けて』『日本画とは何だったのか 近代日本画史論』

『バウハウスとはなにか』

 モダニズムを代表する建築家のひとりヴァルター・グロピウスが創設し、パウル・クレー、ラースロ・モホリ=ナギ、マルセル・ブロイヤーら当代随一の芸術家たちが教鞭を執った伝説の造形学校「バウハウス」。本書は、1919~33年に展開された同校の活動を、第一次大戦後の近代合理主義への懐疑から生まれた「社会改革運動」ととらえ、その分野統合的な世界観を明らかにしようと試みる。バウハウス再考を通じて、その遺産の今日性を論じる。(近藤)

『バウハウスとはなにか』
阿部祐太=著
阿部出版|2000円+税

『ストローブ=ユイレ ―シネマの絶対に向けて』

 『和解せず』(1965)や『アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記』(1968)など、禁欲的なスタイルで知られるフランス出身の映画作家ストローブ=ユイレ(ジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレ)。半世紀以上にわたってアメリカの帝国主義・資本主義へ徹底的に抵抗し続けてきた「テロリスト」の作品に、映画・文学・演劇など様々な分野の研究者たちが挑む。ファンはもちろん、食わず嫌いしてきた人にも読んでほしい1冊。(近藤)

『ストローブ=ユイレ ―シネマの絶対に向けて』
渋谷哲也=編
森話社| 4200円+税

『岡上淑子全作品』

 洋雑誌からの切り抜きを用い、独学ながらにシュルレアリスムふうのコラージュを制作していた岡上淑子。瀧口修造の高い評価を受けるも結婚して美術界から遠ざかっていた岡上の作品が、40年以上の時を経て再評価され始めている。本書は現存するコラージュ作品と写真作品を網羅した完全版とも言うべき作品集。妖しくも一貫した美学を感じさせるイメージの数々が、見る者を想像力の解放区に誘う。池上裕子がテキストを執筆。(中島)

『岡上淑子全作品』
岡上淑子=著
河出書房新社|5000円+税

『日本画とは何だったのか 近代日本画史論』

 明治時代、近代化=西洋化の波を受けて成立した「日本画」は、様式の多様性や国家体制との複雑な関係ゆえに定義が難しい。ならば、「日本画」を異文化との混交で生まれた「クレオール絵画」としてとらえることは可能だろうか。斬新な発想から近代性(モダニティ)をひとつのキーワードとして、江戸時代から戦後までの日本画の展開を広い視野から描出する通史。反近代のムーブメントも含めて各時代の様式と問題意識を丁寧にたどる。(中島)

『日本画とは何だったのか 近代日本画史論』
古田亮=著
KADOKAWA|2400円+税

『美術手帖』2018年4・5月号「BOOK」より)

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