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INSIGHT - 2017.6.16

アートと科学、アートと批評を考察する。6月号新着ブックリスト

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2017年6月号では、作品集、批評の論考集、そしてアートと科学技術について新たな切り口を提示する4冊を取り上げた。

文=中島水緒+松﨑未來
左から『小嶋亜創 陶芸と生活』『Critical Archive vol.3 批評 前/後 継承と切断』『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』『遙かなる他者のためのデザイン 久保田晃弘の思索と実装』の表紙

『小嶋亜創 陶芸と生活』

 長野県の山岳地帯で半農半陶の生活を営む陶芸家・小嶋亜創の初作品集。作家の才能を見出した村上隆が海外への発信を意識して本書をプロデュースした。清廉な陶器の数々を15の技法ごとに分類するほか、田畑で米や野菜をつくり、養蜂を行い、毎夕酒をあおる春夏秋冬の作家の暮らしぶりも紹介する。小嶋と村上の意図が合わず、刊行中止の危機に面した経緯も収録するなど、双方の創作観が剥き出しにぶつかりあうドキュメンタルな構成だ。(中島)


『小嶋亜創 陶芸と生活』
小嶋亜創=著
カイカイキキ|2800円+税

『Critical Archive vol.3 批評 前/後 継承と切断』

 太平洋戦争開戦前後の美術批評を再考する論考集。沢山遼は戦後世代の美術批評家が1930年代の批評を「再演」した状況を考察し、土屋誠一は美学者・中井正一のテキストから政治/芸術の前衛を調停させる目論見の可能性と限界を抽出。成相肇は50年代に興隆した「ルポルタージュ絵画」のアクチュアリティを再提示し、野田吉郎は歴史意識に対する消極的主体=傍観者の論理を森鴎外の小説等から読み解く。批評史を現在につなぐ意欲にあふれた一冊。(中島)


『Critical Archive vol.3 批評 前/後 継承と切断』
沢山遼+、屋誠一、成相肇、野田吉郎=著
ユミコチバアソシエイツ|3000円+税

『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』

 文化活動を支援するNPO「Arts and Law」代表理事で、現役弁護士の著者による、情報化社会における「リーガルデザイン」の試論。社会のルールたる法を、つねに時代とともに変化していくものとしてしなやかにとらえ、創造性やイノベーションを加速させるために主体的に活用していく方法を模索する。「リーガルデザイン」という概念や背景を説明する総論と、音楽、写真、ゲーム、ファッション、不動産といった多彩な13分野での法のあり方を考察する各論の2部構成。(松﨑)


『法のデザイン 創造性とイノベーションは法によって加速する』
水野祐=著
フィルムアート社|2200円+税

『遙かなる他者のためのデザイン 久保田晃弘の思索と実装』

 世界初の芸術衛星の打ち上げなど、メディア・アートの一語ではくくりえない、科学と芸術の領域を横断するハイブリッドな創作活動を展開する久保田晃弘。あらゆる事象を科学的に解釈する幅広い視野と先進的な思考は、まだ見ぬ未来への夢ある物語を紡ぎ出す。過去20年の間に執筆したテキストをまとめた本書は、人間の経験的想像力の地平を超えた先へ行くための道をつくる「デザイン」の役割を説く。詩人であり映像メディア学研究者の松井茂の解題も収録。(松﨑)


『遙かなる他者のためのデザイン 久保田晃弘の思索と実装』
久保田晃弘=著
ビー・エヌ・エヌ新社|2600円+税

(『美術手帖』2017年6月号「BOOK」より)

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