2017.12.16

大衆を魅了した「雪岱調」。川越市立美術館で挿絵画家・小村雪岱の画業をたどる

川越市立美術館が開館15周年を記念し、川越生まれの画家・小村雪岱の展覧会を開催する。その多岐にわたる画業の中から挿絵に注目し、「雪岱調」と呼ばれる独自のスタイルに迫る。会期は2018年1月20日〜3月11日。

小村雪岱 おせん 傘 1937 資生堂アートハウス蔵
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 小村雪岱(1887〜1940)は川越に生まれ、装幀・舞台装置・挿絵など多分野で才能を発揮した画家。荒木寛畝塾や、東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科選科で下村観山に就いて基礎を学び、卒業後は国華社、資生堂意匠部を経て、本の装幀や舞台装置の世界で活動した。

小村雪岱 青柳 1924頃 埼玉県立近代美術館蔵
小村雪岱 赤とんぼ 1937頃 清水三年坂美術館蔵

 雪岱を一躍有名にしたのは、1933年に朝日新聞に連載された邦枝完二作「おせん」の挿絵。華奢な人物像、極細の線による無駄のない描写、余白を活かした画面構成、白黒二階調の明快な配色を特徴とする絵画スタイルで大衆を魅了した。

小村雪岱 春告鳥 1932 個人蔵

 本展では、雪岱の多岐にわたる画業から、挿絵の仕事と、その中で育まれた「雪岱調」と呼ばれる独自のスタイルに注目する。彼が着想を得たであろう先行作品との比較を交え、そのスタイルの誕生に至るまでの過程を考察。さらに、その画業をたどることで雪岱の持つ繊細なセンスや確かな描写技術を明らかにしていく。