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金澤韻連載「中国現代美術館のいま」:世界を探究するための複数の視点を提供する──「UCCA Edge」

経済発展を背景に、中国では毎年新しい美術館・博物館が続々と開館し、ある種珍異な光景を見せている。本連載では、そんな中国の美術館生態系の実態を上海在住のキュレーター・金澤韻が案内。第1回は、2021年5月に開館した「UCCA Edge」をお届けする。

文=金澤韻

UCCA Edgeが入居する「盈凱文創広場」(EDGE)の外観 Courtesy K. Wah Group

 2021年5月、北京の「ユーレンス現代美術センター」(UCCA)傘下の3番目のミュージアム「UCCA Edge」が開館した。場所は人民公園を約1キロ北にいったところで、地下鉄8号線・12号線曲阜路駅を出てすぐの商業ビル内。歩いて5分くらいのところにアートセンター「OCAT Shanghai」と、アーティスト・徐震(シュー・ジェン)が主宰する「MadeIn」ギャラリーがあり、上海の現代美術ファンにとっては以前からおなじみのエリアだ。すぐ南を流れる蘇州河沿いに整備された遊歩道を、上海外灘美術館(ロックバンド・アート・ミュージアム[RAM])や、リッソン、アルミン・レッシュ、ペロタン、Vacancyなどのギャラリーがあるエリアまで歩いて30分くらい。散歩がてら訪ねていくのも楽しそうだ。また西に車を10分走らせれば、クロノス・アートセンターやヴァンガード、アンテナスペースなどが入居するギャラリー街「M50」がある。

 UCCAのパートナー企業のひとつである「K. Wah International Holdings Limited」が所有するビル「盈凱文創広場」(EDGE)は、四角く平たい箱を積み重ねたようなたたずまいが、どこかニューヨークのニュー・ミュージアムをほうふつとさせる。UCCA Edgeを担当した建築家ユニット「SO – IL」(ジン・リウ&フロリアン・アイデンバーグ)のアイデンバーグのほうが、かつて働いていたSANAAでニュー・ミュージアムを担当していたのは偶然だが(建物自体は別の建築事務所によるもの)、街の中に新しくできるアートセンターとして近しい存在感を持つことになったというのはあるかもしれない。グランドフロアに置かれたエルヴィン・ヴルムの《UFO》(2006)を横目で見ながらエスカレーターに乗ると、2階のレセプションデスクへと導かれる。その階から4階までの、5500平米の空間がUCCA Edgeだ。

「盈凱文創広場」(EDGE) Image Courtesy EDGE

 すでに建設計画が進んでいたビルに入居したという経緯が関係しているからか、天井は一般的な美術館建築に比べると低い。しかし吹き抜け部分や、展示室中央に設置された、座ることのできる階段などで、変化に富んだ地形をつくりだし、複数層にわたる空間が階層をあまり意識させることなくつながっている。レセプションデスクの隣に現れる、異質な感じの階段も特徴的だ。ここを登っていくあいだにも、その階段のホールの壁に投影された映像を鑑賞できる。全体的に、ビル内の限られた条件のなかで創造的活動のための工夫を凝らしている印象だ。

UCCA Edgeの内観 Courtesy UCCA Center for Contemporary Art. Photo by Zhu Di
UCCA Edgeの内観 Courtesy UCCA Center for Contemporary Art. Photo by Zhu Di

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