平諭一郎評「宇佐美圭司 よみがえる画家」展(東京大学 駒場博物館)
2018年、東京大学中央食堂に展示されていた宇佐美圭司の絵画作品《きずな》が、過失により廃棄されたことが発覚した。この件の反省を経て、同大学にて本作の再制作を含む宇佐美の回顧展が開催された。本展について、芸術の保存・継承研究を専門とする筆者が論じる。
小金沢智評 「膠を旅する──表現をつなぐ文化の源流」(武蔵野美術大学美術館)
武蔵野美術大学の共同研究「日本画の伝統素材『膠(にかわ)』に関する調査研究」の成果発表展として、同大学の美術館・図書館で 「膠を旅する──表現をつなぐ文化の源流」が開催された。膠づくりの歴史的・社会的背景を見つめ直す本展では、現地調査のドキュメントを中心に、実物資料や同館所蔵の日本画を紹介。膠という素材を通して見えてくるものとは何か、キュレーターの小金沢智がレビューする。
髙木遊評「磯崎隼士『今生』」(WHITE HOUSE)
Chim↑Pomの卯城竜太らが運営する新宿のアートスペース「WHITE HOUSE」で開催された磯崎隼士の個展「今生」。独自の死生観と世界の素朴さを追求し、身体的な感覚や皮膚感をシリコン製の人工皮膚や、絵画で表現する磯崎が発表したのは自身の血で描いた絵画作品だ。本展を東京・根津のキュラトリアルスペース「The 5th Floor」キュレーターの髙木遊がレビューする。
黒沢聖覇評「エキシビジョン・カッティングス」展(銀座メゾンエルメス フォーラム)
銀座メゾンエルメス フォーラム(東京)にて、ロンドンを拠点とするキュレーター、マチュウ・コプランによる展覧会「エキシビジョン・カッティングス」が開催された。展覧会の枠組みを問い直してきたキュレーターが、「カッティング」というキーワードから構想した2つのパートから成る本展を、若手キュレーターとして活動する黒沢がレビューする。
椹木野衣評 森山安英「光ノ表面トシテノ銀色」展、urauny 「urauny diner」展
1968年に結成された前衛グループ「集団蜘蛛」のメンバーであった森山安英は、80年代後半から銀一色の絵画作品の制作を開始。今年4月、連作「光ノ表面トシテノ銀色」などを紹介する同名の展覧会が開催された。森山の絵画における「銀色」は何を意味するのか? 同時期に新宿のWHITEHOUSEで行われた、予約制レストランの形式をとるuraunyの個展とあわせて椹木野衣が論じる。
清水穣評 川端健太郎「Knee Bridge」展(現代美術 艸居)
現代陶芸家として国内外で高い評価を得る川端健太郎の個展「Knee Bridge」が、京都の現代美術 艸居で開催された。本展で川端は新作の磁器作品約30点を発表。現代陶芸が注目を集める現在のマーケットの状況と照らし合わせながら、器/オブジェの境界を超える川端の造形について清水穣が論じる。
永瀬恭一評「Face Up」展
6名のアーティストが参加するグループ展「Face Up」が、昨年12月から今年5月にかけて開催された。会場情報を公開しない本展が持つ意味とは何か。コロナ禍における展覧会のあり方から、インディペンデントな活動とその消費にいたるまで、擬態と物流をキーワードに画家・永瀬恭一が読み解く。
若山満大評「映えるNIPPON 江戸~昭和 名所を描く」展(府中市美術館)
2021年6月から7月にかけ、府中市美術館にて開催された本展では、日本の観光地や景勝地がどのように描かれ広まっていったのかを、絵画をはじめ写真や版画、ポスターなどから探った。歌川広重「名所江戸百景」から、川瀬巴水の新版画、吉田初三郎の鳥瞰図など、時代に沿って変遷をみていく。これらの作品たちは、名所に、人々に、そして作家にどのような影響を与え関係を築いてきたのか。東京ステーションギャラリー学芸員の若山満大が論じる。