熊倉晴子評 「青野文昭 ものの, ねむり, 越路⼭, こえ」(せんだいメディアテーク)
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1990年代より家具や日用品などの廃棄物を補完し新たな形態を生み出してきた青野文昭。昨年末から今年にかけて、せんだいメディアテークにて開催された展覧会「ものの, ねむり, 越路⼭, こえ」では、東日本大震災以降に制作された大型作品と新作を中心に、1000平方メートルの会場全体を作品化し、震災の記憶を立ち上がらせた。本展をキュレーターの熊倉晴子がレビューする。
飯岡陸評 エドワード・ヤン『ヤンヤン 夏の想い出』
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1980年代におこった台湾ニューシネマを代表する映画監督、エドワード・ヤン。『ヤンヤン 夏の想い出』は2000年に公開され、カンヌ国際映画祭監督賞を受賞するも、ヤンの遺作となった作品である。台湾の社会を見つめ続けてきたヤン監督が本作に込めた問いに、現代の私たちはどう応答できるか。キュレーターの飯岡陸がレビューする。
檜山真有評 フェリックス・ゴンザレス=トレス《無題(角のフォーチュンクッキー)》1990/2020
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「美術作品としての唯一性は作品の所有権のみに委ねられる」。この定義をもとに制作された、故フェリックス・ゴンザレス=トレスによる《無題(角のフォーチューン・クッキー)》(1990)。最初の発表から約30年を経た今日、本作はアフターコロナの世界に対するアート界からの提案として、個人宅を中心とした世界中の1000ヶ所で同時に展示されている。本展をキュレーターの檜山真有はどう見ただろうか。
馬定延評 カディスト・アート・ファウンデーションとの共同企画展「もつれるものたち」(東京都現代美術館)
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世界各地の美術館や文化組織と協働し展覧会などを行うカディスト・アート・ファウンデーションと東京都現代美術館の共同企画展「もつれるものたち」は、新型コロナウイルスの影響を受け、3ヶ月遅れで公開中だ。12組のアーティストによる、ものをめぐる多様な思索を通じて現代社会を新たな視点でとらえようとする試みを、馬定延がレビューする。
はがみちこ評《BEACON 2020》+「目を凝らそ」
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京都文化博物館で今年1月から展示された、現代美術のユニットKOSUGI+ANDO(小杉美穂子・安藤泰彦)と映像作家の伊藤高志、稲垣貴士、哲学者の吉岡洋による映像インスタレーション作品《BEACON 2020》と、オンライン上で展開されるプロジェクト「目を凝らそ」。コロナ禍によって世界の見え方が大きく変わるいま、京都の路上に焦点を当てた両展を、アートメディエーターのはがみちこが論じる。
松下哲也評 パープルームギャラリー「常設展Ⅱ」
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神奈川・相模原のパープルームギャラリーで「常設展」(4月28日~5月5日)に続き開催された「常設展Ⅱ」。新型コロナウイルスの影響下、梅津庸一率いるパープルームが「常設展」の名の下に見せたかったものとは何か、松下哲也が論じる。
調文明評「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」(東京都写真美術館)
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東京都写真美術館の「写真とファッション」展は、新型コロナウイルス感染症の影響による休館を経て、7月19日まで開催。長年にわたり文化誌『花椿』の編集者を務めた林央子を監修に迎え、アンダース・エドストローム、髙橋恭司、エレン・フライス×前田征紀、PUGMENT、ホンマタカシが参加した。1990年代以降の写真とファッションの関係を再検証する本展を、写真批評家/写真史研究者の調文明がレビューする。
中島水緒評「青木野枝展 微塵」(gallery21yo-j)
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4月に開催予定だった青木野枝の個展「微塵」は、緊急事態宣言を受け開催を延期。その後、gallery21yo-jのウェブサイトにて、本展の展示風景を記録した中川周による動画が公開された。「記録」であると同時に、中川の「作品」といった両義的な性質をもつこの記録動画に着目し、中島水緒がレビューする。
山本浩貴評「Alter-narratives-ありえたかもしれない物語-」展
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東京藝術大学大学院の国際芸術創造研究科が主催するグループ展「Alter-narrativesーありえたかもしれない物語ー」が、6月1日~30日に開催された。コロナ禍においてオンライン上での開催となった本展を、文化研究者の山本浩貴がレビューする。
小田原のどか評「遠藤麻衣×百瀬文 新水晶宮」(TALION GALLERY)
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身体と演じること、眼差しと欲望、セクシャリティとジェンダーについて、多様な角度からアプローチを重ねてきたふたりのアーティスト、遠藤麻衣と百瀬文が、男と女、自然物と人工物などに二分されることのない、新たな性のあり方を探る展覧会「遠藤麻衣×百瀬文 新水晶宮」(TALION GALLERY)。本展を、依然として強い性差別やジェンダーギャップが残る世界の現状を踏まえ、小田原のどかがレビューする。
若山満大評「いのちの裂け目―布が描き出す近代、青森から」展(青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC))
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青森公立大学国際芸術センター青森(ACAC)にて、3名のアーティストが青森市教育委員会が所蔵する民俗資料や文化財を用いたインスタレーションを展観する本展。新型コロナウイルスの影響による開催延期に際して、動画公開などウェブコンテンツを充実させるなどの展開をみせた。それに対し、「観られない立場」から、インディペンデント・キュレーターの若山満大がレビューする。
中村佑子評 ツァイ・ミンリャン『あなたの顔』
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ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した『郊遊〈ピクニック〉』を最後に、商業映画から離れていたツァイ・ミンリャン。現在公開中の『あなたの顔』は、ツァイが5年ぶりに放った映画作品だ。13人の登場人物の「顔」が、極端なクローズアップと洗練されたライティングによって細部まで映し出される本作は、見る者にどのようなメッセージを届けるだろうか。映像作家の中村佑子がレビューする。
富田大介評 contact Gonzo長編映画作品『MINIMA MORALIA』
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パフォーマンスをはじめ、インスタレーション・映像・写真作品の制作を行うアーティスト集団contact Gonzo。新型コロナウイルスの影響下において、長編映画作品『MINIMA MORALIA』のオンデマンド配信をスタートした。発表のたびに素材を加え、編集を更新し、変化し続ける「半ドキュメンタリー」を、美学・舞踊論研究者の富田大介が紐解く。