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2020.5.30

ピーター・ドイグからオンライン映像祭まで、5月のレビューをプレイバック

美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、5月に公開された全12本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。

ピーター・ドイグ スキージャケット 1994 油彩・キャンバス 295×351cm テート蔵
(C) Peter Doig. All rights reserved, DACS & JASPAR 2019 C3006
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蔵屋美香評「ピーター・ドイグ展」(東京国立近代美術館)

ピーター・ドイグ 馬と騎手 2014 油彩・キャンバス 240×360cm 個人蔵
(c) Peter Doig. All rights reserved, DACS & JASPAR 2019 C3006

 2020年2月26日に開幕しながらも、新型コロナウイルスの感染拡大によりわずか3日で休館し、5月6日現在も再開していない東京国立近代美術館の「ピーター・ドイグ展」。横浜美術館・館長の蔵屋美香が、3月までの勤務先である同館で見た展示を手がかりに、鑑賞体験における「絵画の物理的なサイズ」の意味と、それを再現するためのVR技術の可能性を考える。
 

小田原のどか評「Don’t Follow the Wind」

『Don’t Follow the Wind 公式カタログ 2015』 撮影=筆者

 東日本大震災で発生した福島第一原発事故。これによって発生した帰還困難区域で、2015年3月11日から開催されている展覧会「Don't Follow the Wind」を現在のパンデミックと照らし合わせ、小田原のどかが論じる。
 

きりとりめでる評「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命─人は明日どう生きるのか」(森美術館)

「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命─人は明日どう生きるのか」(森美術館、東京、2019-20)展示風景
撮影=木奥惠三 画像提供=森美術館

 最先端のテクノロジーによって変化しうる、近未来の世界のすがたを都市や建築、ライフスタイル、身体の拡張、そして倫理など、様々な視点から照射する100点以上のプロジェクトや作品を見せた「未来と芸術展」。コロナ禍に直面しているいま、本展で提示された未来は私たちにどのように映るのか? 批評家のきりとりめでるがレビューする。
 

北澤周也評「砂守勝巳写真展 黙示する風景」(原爆の図丸木美術館)

沖縄 名護市辺野古 1989

 沖縄の地で、フィリピン人の父と奄美大島の母とのあいだに生まれ、ボクサーを経て写真家となった砂守勝巳(1951~2009)。そのドラマチックな生涯ゆえか、作品そのものの評価が必ずしも正当になされてこなかった。広島や雲仙といった被災の地や、沖縄、釜ヶ崎をテーマとした写真シリーズで構成された同展について、東松照明の研究を沖縄で続ける、批評家の北澤周也がレビューする。
 

檜山真有評「ハンナ・アーレントと20世紀」展(ドイツ歴史博物館)

ルプレヒト・カール大学ハイデルベルクが発行したハンナ・アーレントの学生カード(1928) (C) Universitätsarchiv Heidelberg

 大衆社会による全体主義の生成メカニズムを詳細に分析した『全体主義の起源』(1951)などで知られるドイツ出身のユダヤ人思想家、ハンナ・アーレント。現在ドイツ歴史博物館では、「ハンナ・アーレントと20世紀」と題し、アーレントの活動を通じて、アイヒマン裁判やシオニズム、アウシュビッツにおける全体主義などを振り返る展覧会をウェブで公開中だ。キュレーターの檜山真有が、本展と照らし合わせながら世界各地で定着しつつあるオンライン展覧会の性質について論じる。
 

大岩雄典評 オンライン映像祭「Films from Nowhere」

佐々木友輔 コールヒストリー 2019

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、イベントが次第に自粛されつつあった3月にいち早く企画されたオンライン映像祭。映像作家の佐々木友輔が発案し、荒木悠とともに映像作家たちに呼びかけ、9作家が参加し、3週間にわたって開催された。アーティストの大岩雄典が、コロナ禍の身体的な影響に触れながら作品群を分析する。
 

椹木野衣評 緊急事態下の展示とバイオハザード

ヒューバート・ウィンター・ギャラリー(ウィーン)でのグループ展「flowers of sulphur」(2019)の展示風景より、
三上晴子《The World Memorable: Suitcase Biohazard Autoclave Bags》(1993) 
Photo by Simon Veres Courtesy of Galerie Hubert Winter, Vienna, 2020

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの美術館で展覧会を「見に行くことができない」状態が続いている。アーティスト・三上晴子のコンセプトであった「被膜(皮膜)世界」は、防護服やマスクの意味も一変した現在の生活と、その奇妙さを示すものだった。三上の作品を手がかりとして、こうした状況を椹木野衣が論じる。
 

清水穣評「尼ヶ根古窯─瀬戸黒のはじまり─」展(多治見市文化財保護センター)

織部黒茶碗(土岐市隠居西窯出土) 土岐市美濃陶磁歴史館蔵

 多治見市文化財保護センターで開催中の「尼ヶ根古窯─瀬戸黒のはじまり─」は、安土桃山時代に操業されていた「尼ヶ根古窯」でつくられた「瀬戸黒」に焦点を当てた展覧会(現在は休館中)。本展にみる瀬戸黒の変遷と「陶芸の前衛」について、清水穣が論じる。
 

田中綾乃評『おちょこの傘持つメリー・ポピンズのいない劇場』

『おちょこの傘持つメリー・ポピンズのいない劇場』の配信映像より

 SPAC(静岡県舞台芸術センター)がゴールデンウィーク期間に開催を予定していた「ふじのくに⇄せかい演劇祭2020」が新型コロナウイルスの影響で中止となり、代わってオンラインを中心とした企画「くものうえ⇅せかい演劇祭2020」が立ち上がった。本演劇祭のなかからライブ配信された『おちょこの傘持つメリー・ポピンズのいない劇場』を中心に取り上げ、人々が集まることができなくなった現在における演劇のあり方について、哲学研究・演劇批評の田中綾乃が論じる。
 

塚田優評「9 Posters」(TALION GALLERY)

展示風景より、左から山本悠《私はスイカに桜を見せる》(2020)、秋山伸 上《「9 Posters」のためのポスター Phase 2》、下《「9 Posters」のためのポスター Phase 1》(2020)、新津保建秀《琵琶湖》(2017)、脇田あすか《BREAD and BUTTER》(2020) 撮影=木奥惠三 Courtesy of TALION GALLERY

 広告媒体としての存在意義を担うものとして、瞬く間に消費されては姿を消してゆくポスター。メディアの多様化とデジタル化が進む現代において、かつての重要性は失われつつあるだろう。イラストレーター山本悠による企画展「9 Posters」では、ポスターが持つ物語や形式、ポスターそのもの物質性などに焦点を当てる。ポスターの存在は、いったい何に支えられているのだろうか。本展を、視覚文化評論家の塚田優が論じる。
 

小金沢智評「最果タヒ 詩のホテル」(HOTEL SHE, KYOTO)

「詩のホテル」より 撮影=尾山直子

 詩人として多彩な活動で注目を集める最果タヒとグラフィックデザイナーの佐々木俊が、京都にあるホテル「HOTEL SHE, KYOTO」内の3室で「詩のホテル」を展開している。部屋のそこここに最果の詩が散りばめられたこの一室に東北芸術工科大学専任講師・小金沢智が宿泊。その体験を通じてレビューする。
 

横山由季子評「背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」展

展示風景より、津田青楓《疾風怒濤》(1932、笛吹市青楓美術館蔵)

 明治時代に図案制作を始め、1907年に安井曾太郎とともに渡仏。帰国後の14年には二科会の創立メンバーになるなど洋画の世界で活躍するが、その後は洋画を離れ文人画風の作品世界を展開した画家・津田青楓。練馬区立美術館「生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和」は、作品や関連資料を通してその生涯を振り返る大規模な回顧展となった。同展を、金沢21世紀美術館学芸員・横山由季子が論じる。