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「森万里子:燦燦」(森美術館)開幕レポート。森万里子、24年ぶりの国内大規模個展【2/3ページ】

脳波でつながる《Wave UFO》が日本初公開

 本展の大きな見どころとなるのが、日本初公開となる《Wave UFO》(1999-2002)だ。全長約11メートルの巨大な立体作品は、勾玉や宇宙船を思わせる有機的な形状を持つ。内部には3名の鑑賞者が同時に入り、ヘッドセットを装着して脳波を測定。アルファ波、ベータ波、シータ波などの状態が色彩や映像として可視化され、鑑賞者は自分自身と他者の意識の状態を体験する。

全長約11メートル、勾玉や宇宙船を思わせる有機的な形状を持つ《Wave UFO》(1999-2002)

 片岡によれば、3名の脳波がリラックスした状態で同調すると、映像のなかに「コヒアランス」を示す円が現れるよう設計されている。ただし、2003年の発表以来、実際にその状態が実現したことはないという。

 作品の背景にあるのは、森が2000年代以降、創作の中心的な概念として掲げてきた「Oneness(一体性)」だ。人間は互いに独立した存在でありながら、意識や生命の根源においてつながっているのではないか。森は科学者や技術者との協働によって、その問いを鑑賞者自身が経験できる装置へと展開した。

《Wave UFO》内部での鑑賞体験を再現した展示

 片岡はまた、この作品が「特定の宗教に依拠しない普遍的な体験」を目指して制作されたことも説明した。宗教的な図像を用いた初期のインスタレーションから、科学技術を介して意識のつながりを探る作品へ。そこには、森の表現における重要な転換が見て取れる。

 《Wave UFO》は完成後、世界各地で展示されてきたが、日本での公開は今回が初めて。グッゲンハイム・アブダビが所蔵する作品の特別貸与によって実現した。記者発表会で森は、長年日本で展示できなかった作品を紹介できることへの喜びを語り、「多くの人に体験してほしい」と期待を寄せた。

展示風景より

古代文明と宇宙科学が交わる場所

 2000年代半ば以降、森は縄文文化やケルト文化など、古代の人々の自然観や宇宙観に関心を深めていった。第3セクション「太古の記憶」では、沖縄や日本各地の縄文遺跡、スコットランドなどでのリサーチをもとに制作された作品を紹介する。森が着目したのは、組織化された宗教が成立する以前の、人間と自然との関係だ。

縄文時代の遺物などの調査から生まれた《フラットストーン》(2006)

 《フラットストーン》(2006)は、縄文時代の遺物などの調査から生まれた作品。古代の造形を参照しながら、現代的な素材と簡潔な形態によって再構成している。いっぽう、《トムナフーリ》(2006)は、宇宙科学と古代の精神文化を結びつける作品だ。スコットランドのケルト文化において、祖先の魂が転生する場所とされる丘の名を冠したこの作品は、東京大学宇宙線研究所のニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」で観測されたデータをもとに、LEDの光を明滅させる。

宇宙科学と古代の精神文化を結びつける《トムナフーリ》(2006)

 ニュートリノは、太陽や超新星爆発などに由来する素粒子だ。肉眼では見ることのできない宇宙の現象を光へと変換することで、作品は人間の感覚を超えた時間や空間への想像力を促す。

 このセクションで紹介される近作《お社》(2025)では、自然信仰の対象となってきた巨石がモチーフとなっている。内部に置かれたアクリル彫刻は、淡路島の上立神岩や熊本県の押戸石などに着想を得たもの。積層したアクリルと特殊なコーティングによって、光の角度に応じて異なる色彩が現れる。

自然信仰の対象となってきた巨石がモチーフとなっている近作《お社》(2025)

 片岡は、自然光が差し込む展示室を選び、作品のサイズも会場に合わせて調整したことを説明した。古代の巨石信仰を参照しながら、人工素材と光学技術によって新たな造形へと転換する試みには、森の初期作品から続くテクノロジーと精神性の融合が見られる。

編集部

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